電波障害対策の基礎知識
(トロイダルコア、EMIクランプの活用)

 電波障害対策に有効なトロイダルコアや、いろいろな用途に使える2分割のフェライトコア(EMIクランプ)の種類や活用方法などについて紹介します。

■トロイダルコアについて

 トロイダルコアは特殊な金属を高温で焼結(=金属粉末を圧縮・成形し焼き固めたもの)したドーナツ型の製品で、ACラインフィルターやコモンモードフィルターなど、いろいろな用途に使用できる便利な部品です。トロイダルコアは材質によってフェライトとカーボニル鉄の2種類に分類できます。
 フェライト・トロイダルコアは、アメリカのアミドン社のものが有名で、秋葉原のパーツを扱っているお店などで入手できます。また、材質の違いで#43とか#61などがあり、障害が発生する無線局の運用周波数帯によって使用するものを選びます。
 ここでは、電波障害対策によく使用するアミドン社製のFTシリーズ(マンガン亜鉛・ニッケル亜鉛の複合体)について説明します。 

●トロイダルコアの種類

  • 透磁率による種類
     FTシリーズのトロイダルコアは、透磁率によって#43や#61などの種類があります。#61は18MHz以上、それ以下の周波数は#43が電波障害対策に効果があるといわれています。
  • 外形寸法による種類
     FTシリーズはFT-114やFT-240といった型名で呼ばれていて、実はこの数字がインチによる外形寸法を表しています。たとえば、FT-114の外形寸法は114inchです。1inchは2.54cmですから、1.14×2.54≒2.9cmとなります。FT-240は、外形が約6cmになります。また、内径が約3.6cmありますから、電気製品のACコンセントをそのまま通すことができ、障害を受けている機器のACライン対策に便利です。

  •  価格と入手先
     価格は外形寸法の大きいものほど高くなり、FT−114で800円程度、FT240は1、000円以上します。FTシリーズなどのトロイダルコアは、無線機の販売店(ハムショップ)や電気パーツ店で扱っています。無線専門雑誌などに広告が出ていますので参考にしてください。

●線の巻き方(バイファイラ巻きとキャンセル巻き)

 トロイダルコアに2本の線を巻く方法は2種類あります。ACコードのように平行2線をそのまま巻くのがバイファイラ巻きです(右図A)。
 別々の線2本を別々に右図Bのように巻くのがキャンセル巻きです。いずれの巻き方でも電波障害の原因となるコモンモードには効果があります。
 効果が顕著に現れない場合は、線の巻き回数が少ないことも考えられますので、巻き回数を増やしたりトロイダルコアを2段にして対策してみることも必要になります。

■2分割型のフェライトコア(EMIクランプ)

 2分割型のフェライトコアは、トロイダルコアと同じような材質のものをパイプ状にして、半分に分割した製品です。ちょうどクリップを止める感覚です。
 2分割可能な構造になっているので巻きつけが容易で、対策をおこなう機器の線材を切断するなど加工しなくて済むほか、トロイダルコアにくらべて形状が小さく、目立たないという利点があります。
 ここでは、EMIクランプフィルターという名称で販売しているTDK製のZCATシリーズを例に説明します。

●ZCATシリーズの種類

 ZCATシリーズは、ZCAT-2032-0930-BKといった品名がつけられています。2032の20は外形寸法をmmの単位で、32は長さをmmの単位で表しています。
 また、0930の09は内径寸法をmm単位で表し、30はコアの材質を表示しています。
 最後のBKは製品の色でBKがついたものが黒い色、BKのないものが一般的な灰色の製品です。
 ZCAT-2032のほか、サイズの小さいZCAT-2017-0930やZCAT-1518-0730、そしてサイズの大きいZCAT-2132-1130やZCAT-3035-1330などがあります。

●線の巻き方

 EMIクランプを分割して、障害対策をおこなう機器の線材を可能な限り巻き、プラスチックケースを「パチン」と止めるだけです。ZCAT-2032で電話機の回線ケーブルが3回、ACアダプターの電源線を5回程度巻くことができます。


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