October 2011 NEWS TOPICS INFORMATION


熊本県熊本市の政令指定都市化が決定

 平成23年10月18日に開かれた閣議において、熊本県熊本市の政令指定都市への移行が決定され、10月21日の官報で「指定都市の指定に関する政令の一部を改正する政令」が公布されました。

 この政令は平成24年4月1日に施行され、同日から熊本市は全国で20番目の政令指定都市となります。

 熊本市には五つの行政区が設置される予定で、平成23年11月下旬から開催予定の平成23年度第4回定例市議会において、関係する条例案等が提案され、審議の後、正式決定となります。

 平成24年4月1日から熊本市に誕生する予定の五つの行政区のJARL制定区番号については、同市議会の決定の後お知らせいたします。

(10月21日)


「詳細」


JP2YCEレピータその後
 紀伊半島水害における移設運用の役割を終えて

 台風12号の影響による紀伊半島水害において、東海総合通信局から被災地の状況の照会を受けた、冨岡 巧三重県支部長(JR2MHV)が現地の情報を確認し、JARL東海地方本部では東海総合通信局の非常時における臨機の対応により免許を受けて、被災地で活躍するボランティアのアマチュア無線家の連絡等に供するため、レピータ局JP2YCE(設置場所:三重県鈴鹿市、439.70MHz)を、9月10日に水害被災地の一つである、三重県南牟婁郡紀宝町の紀宝町役場屋上に臨時移設しました。

 三重県と和歌山県の県境に位置する周辺の地域は極めて起伏の激しい地形で、道路や橋、そして携帯電話網を含めた公衆通信回線網が寸断した地区も多かったようです。

 被害を受けた近接の自治体では、「熊野市職員のアマチュア無線グループ」や「熊野無線クラブ」、そして県境を越えた和歌山県新宮市の「新宮HFアマチュア無線クラブ」等のアマチュア無線家の協力を得て、アマチュア無線を活用した、各自治体の災害対策本部の情報収集がおこなわれました。

 JP2YCEレピータが速やかに紀宝町役場に臨時移設され、ハンディー機での広域通信が可能となったことで、アマチュア無線家のボランティアによる情報収集活動をより円滑におこなうことができたのです。

 そして「被害状況の把握」や「公衆通信回線網などの復旧」がひととおり済み、JP2YCEレピータは「臨時開設のアマチュアレピータ」としての一応の役割を終えました。

 JP2YCEレピータは、東海総合通信局の免許を受け、10月19日に元の設置場所(三重県鈴鹿市白子町官有地鈴鹿高専)に戻って、これまでどおり、周辺地域のアマチュア無線家の交信に有効に活用されています。

 今回のJP2YCEレピータの移設・活躍について、冨岡 巧三重県支部長は、「今回被害にあわれた東紀州の方々に対して、何か我われが可能なことはないだろうかということに始まり、多くの関係諸団体の協力を得てボランティア活動を中心とする多くのアマチュア局に利用していただきましたことは、今後の災害時における良い意味での例となりました。たまたま鈴鹿市にはレピータ局が2局稼動している特殊性もあり他の地区では同様には行かないかもしれません。その場に応じた適切な判断が必要です。この移設により色々な場面で「アマチュア無線」という用語が頻繁に使用されたことが何よりも嬉しく感じました」と語っています。

(10月20日)



愛知県瀬戸市立西陵小学校の児童が古川宇宙飛行士と交信に成功

 10月18日、愛知県瀬戸市立西陵小学校の16名の児童が、ARISSスクールコン タクトで国際宇宙ステーションで長期滞在中の古川 聡宇宙飛行士との交信 に成功しました。

 東海地方でのスクールコンタクトの実施は6例目で、愛知県内での実施は 5例目となりますが、日本人宇宙飛行士との交信は、2009年7月11日に若田 光一宇宙飛行士と交信に成功した、岐阜県関市立武芸川中学校以来となり ます。

 今回の西陵小学校のスクールコンタクトは、東海地方本部をはじめ、地元 瀬戸市のアマチュア無線家の協力で進められてきました。

 このスクールコンタクトのリーダーである、7L1FFN/2磯 直行愛知県 支部長から詳細なレポートをいただくことができましたので、ご紹介いたします。

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■待望の日本人宇宙飛行士との交信に成功

 「せともの」で知られる愛知県瀬戸市、その北西部にある瀬戸市立西陵小学校で、 ARISSスクールコンタクトによる日本人宇宙飛行士古川 聡さんとの交信に成功しました。 チャレンジャーの子供たち16名をはじめ、会場に集まった人々は皆、感動の中に包まれました。

 愛知県でのARISSスクールコンタクトは、2005年9月の 愛・地球博(愛知万博)会場内の8N2AI の後、2010年から2011年にかけてシリーズで実施した、 旭学舎(尾張旭市、8N2OA)名古屋市立船方小学校(名古屋市、8N2FE)豊田こども科学探検隊(豊田市、8N2T)に 続き5回目になります。

■瀬戸市での実施

 西陵小学校での実施は、瀬戸市在住のアマチュア無線家 加藤 一さん(JE2XBS)を中心に愛知県支部や東海地方本部のメンバーとともに準備を進めてきたものです。
 ARISSスクールコンタクトはNASAの教育プログラムの一つということもあり、実施するには開催地の教育委員会からその活動に対して後援等をいただく必要があり、これがひとつのハードルになっています。
 しかし、加藤さんは偶然にも瀬戸市教育委員会のトップである、教育長の大澤義洋先生が小学校の恩師で、今もときどき会って談笑する関係でした。そのことから話はスイスイと進み、瀬戸市内の小学校の一つ、西陵小学校も紹介いただくことができました。西陵小学校は全校生徒約670名、21学級の小学校です。小学校は丘陵地にできた住宅地の真ん中にあり、周囲にマンション等の高い建物がないためARISSスクールコンタクトを実施するには絶好の場所です。

■日本語による交信が決定

 2011年7月1日、ARISS運用委員会の安田 聖さん(7M3TJZ)から、10月17日の週にARISSスクールコンタクトが実施できるが可能かどうか、との第一報を受けました。
その日程は、ちょうど古川 聡宇宙飛行士(KE5DAW)が国際宇宙ステーションに搭乗している期間で、日本語による交信ができることを意味しています。
 西陵小学校はその時期、運動会シーズンということもあり心配しましたが、西陵小学校の長江保広校長先生から「受けます!」の即答を得て本格的な準備が開始されました。

■事前研修

 さっそく、本番までに数回おこなう事前研修について打ち合せるために西陵小学校を訪問しました。

 校長先生には申請前から「最近3回の愛知県での実施のように、申請が多いので日本語による交信は難しく、英語に切り替えることもある」とお伝えしていました。
 しかし、興奮気味の校長先生から「すでに3年生から6年生までの生徒に説明会を実施し、多数の交信希望生徒から各学年4名合計16名を抽選で決めました。すでに質問も考えてあり英語で練習もしています。準備万端です」との報告をいただきました。
 あまりにも話が進んでいたので、「日本語で交信できるんです…」とはなかなか言い出せませんでしたが、最終的に校長先生から「子供たちが英語に触れる良い機会なので、本番は日本語だとしても、しっかり英語を練習してもらいましょう」ということになりました。

 本番までの事前研修は4回おこなわれました。
 1回目は夏休み中の8月21日(日)に、核融合科学研究所の横山雅之先生指導による宇宙と科学に関する実験をおこないました。実験終了後、校舎内に隠した電波発信源をFMラジオで探すゲーム「電波フォックスハンティング」をおこない電波のふしぎを体験しました(右の写真)。
 9月4日(日)と9月24日(土)は英語による交信練習をしっかりおこないました。この頃から研修会場には、地元CATV局が取材に来るようになりました。
 10月15日(土)の最終研修会では、本番さながらのリハーサルをおこないました。この日に初めて子供たちに、本番は日本語による交信になることを伝えましたが、あっさりと日本語による交信練習を終えることができました。子供たちの対応力には目を見張るものがあります。
 10月2日(日)には若い大学生の力も借りて、小学校屋上にクロス八木アンテナ の建設をおこないました(右の写真)。

■スクールコンタクト当日

 10月18日(火)16時30分から、交信に先立って開会セレモニーがおこなわれました。校長の長江先生、JA2HDE木村時政JARL東海地方本部長、教育長の大澤先生の挨拶に続き、総務省東海総合通信局無線通信部陸上課長の千田信久氏、当日、規正局を運用いただいた電波監理部監視課の皆様、教育委員会関係者ほか多くの来賓をお迎えして盛大におこなわれました。子供たちによる英語での質問の披露もおこなわれました。

 そして、予定より少し早くなった17時27分、「挨拶や返事、人との絆を深めて欲しい」という思いから作られた「絆」と書かれたのぼりを前に臨時に開設した社団局8N2SETOから、国際宇宙ステーションの古川 聡宇宙飛行士への呼び出しを始めました。
 数回のコールの後、古川宇宙飛行士の声が聞えましたが、「音が途切れています」との返事でしばらく不安定でした。国際宇宙ステーション側では地上からの多くの混信があったのかもしれません。
 「こちら宇宙ステーション、良く聞えます」との返事を受けた後、質問を開始し、16人の子どもたちが次々と質問と回答を繰り返しました。
 「宇宙ステーションでスポーツはできますか?」との質問に、古川宇宙飛行士からは、「できますよ。ボールはどこまでも飛んでいってしまいます。楽しいスポーツを考えてみてね」などとわかりやすい回答をいただきました。

 最後に古川宇宙飛行士から会場の皆さんに「将来にむけて夢を持ち続けて努力をしてください。そうしたらきっとその夢はかないます。夢がかなうのを応援しています」とのメッセージをいただくと、会場に詰め掛けた約400人の来場者から割れんばかりの拍手をいただくうちに交信を終了しました。

 交信終了後は、木村東海地方本部長からチャレンジャーの子供たちひとりひとりに、ARISSスクールコンタクト修了証が手渡され、その後はテレビ局や新聞社の取材を受け、子供たちは興奮しながら小学校を後にしました。

 交信終了の1時間後には、中継取材に来ていたNHKのニュースで放映され、翌朝の新聞にはカラー写真付きで「宇宙の古川さんと交信」の記事が大きく掲載されました(当日は中日ドラゴンズがリーグ優勝した日だったこともあり、各新聞記事はいつもより小さめの記事でした。Hi!)

 今回、日本語によるARISSスクールコンタクトのコントロールオペレータを初めて体験しましたが、日本語だとすべての交信内容がわかってしまうので、無線機の操作や進行をごまかすことができません。その意味で、これまで体験してきた英語での交信以上にとても緊張しました。

 また、今回のARISSスクールコンタクトを企画した加藤さんは7月中旬に関東地方への単身赴任となり、週末におこなわれた事前研修には協力いただけたものの、残念なことに平日だった当日は仕事のため交信本番を直接目で見ることができませんでした。
 しかし、交信終了直後に教育長の大澤先生から電話があり、「感動したよ。子供たちは貴重な体験ができてとても良かったよ。ありがとう」とのメッセージをいただいたとのことです。成功して本当に良かったです。

■ARISSスクールコンタクト、今後も…。

 ARISS運用委員の安田 聖さんによると、8月24日のプログレス補給船44号機の打ち上げ失敗により、次回のソユーズ打ち上げが未定となり、以降のスクールコンタクトは訓練のための交信を除いてすべて延期され再開は未定との情報を得ました。
 その意味でも今回のARISSスクールコンタクトでは大変貴重な体験をさせていただきました。子供たちに忘れられない感動や自信を深く刻み込むことができるARISSスクールコンタクトはきっと再開されることと思います。

 東海地方本部では、今後も「知的好奇心探求」を合言葉に、この活動を継続していきます。

 最後に、ARISSスクールコンタクトの実施に際し、本当に多くの皆様のご協力をいただきました。心よりお礼を申し上げます。

(レポート:7L1FFN/2 磯 直行愛知県支部長)

(10月19日掲載)
(11月4日更新、レポートを追加)



タイ王国の洪水危機に関する「世界のアマチュア無線家」への協力要請

 IARU第3地域非常通信委員会議長のVK3PCジム・リントン氏から、タイ王国の洪水危機に関する「世界のアマチュア無線家」への協力要請の依頼メールが届きましたのでお知らせします。

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《洪水危機へのアマチュア無線家の対応》

 タイの洪水危機で非常通信に使用するため、アマチュア無線家は7.060-7.063 MHzからQSYして、空けておくように要請します。

 タイ当局は、280人の死者を出した、ここ何十年かで最悪の洪水と闘っています。首都のバンコックも危機に瀕しています。
 周辺地域では、洪水が農作物を壊滅させ、工場を水浸しにし、何百万もの人々の生活や家屋を破壊しています。およそ11万人が避難所に避難しています。
 洪水は、さらに数週間続く見込みで、ここ数日は高潮も加わり水が引きにくい状態です。復旧作業には1年近くかかりそうです。

 洪水に関する非常通信の大部分は、ボランティアのアマチュア無線家によって2m バンドでおこなわれています。家が水浸しになっているアマチュア無線家も多く、どれだけの数のアマチュア無線家が非常通信に参加しているか推計することは困難です。
 タイの連盟RASTの中央局HS0ACも洪水の脅威にさらされています。RASTの国際連絡担当役員のHS0ZDX トニー・ウォルサム氏は、第3地域の会員連盟に洪水災害の規模を伝えてくれるよう訴えています。
 タイ放送通信委員会(National Broadcasting and Telecommunications Commission)は、洪水危機の非常通信で使用するように、アマチュア無線用レピータを寄贈しました。

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 今回のタイ王国の洪水危機では、主に144MHz帯が非常通信に使用されている模様ですが、今後の現地の被害状況によっては7MHz帯を使用した非常通信がおこなわれる可能性もありますので、日本のアマチュア無線家の皆様も7MHz帯で運用される場合、特に7MHz帯の電波が世界の広範囲に伝搬する夜間は、非常通信に混信や妨害を与えないように十分に注意してください。

(10月17日)



岩手県大槌町の16名の子供たちが古川宇宙飛行士と交信に成功

 10月15日、岩手県上閉伊郡大槌町の大槌町立吉里吉里(きりきり)小学校体育館で、ARISSスクールコンタクトが実施され、大槌町内の各小学校から集まった代表児童16名が国際宇宙ステーションで長期滞在中の古川 聡宇宙飛行士との交信に成功しました。

 岩手県上閉伊郡大槌町は、3月11日に発生した東日本大震災と併発した大津波の大きな被害を受けた被災地の一つです。

 東北地方でのスクールコンタクトの実施は5例目、岩手県内では2例目の実施となった、吉里吉里小学校体育館でのスクールコンタクトは、大規模自然災害の爪痕が残る被災地の子供たちに「夢のある体験の機会を提供すること」を目的として企画され、アマチュア無線盛岡クラブ(JE7RJZ野田尚紀会長)メンバーが中心となって準備が進められたものです。

 このスクールコンタクトのリーダーである、JE7RJZ野田尚紀さんに、企画、準備、実施までのたいへん貴重なレポートをいただくことがきましたのでご紹介いたします。

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★通信の空白域解消の願いと被災地の子供の夢を託した
岩手県大槌町でのスクールコンタクト 8J7A交信成功!

 私たち盛岡クラブは、2010年1月に盛岡市子ども科学館に臨時局8J7Aを開設して、野口聡一宇宙飛行士とボーイスカウト盛岡5団の小中高校生11名とのスクールコンタクトに成功しました。
 これは、1949(昭和24)年12月に東北で最も早く発足した当クラブの創立60周年を祝う一度きりの記念運用となる予定でした。

吉里吉里小学校前の住宅地はいまも更地のまま

 そして迎えた2011年3月11日。盛岡が大きな揺れと長時間の停電に見舞われる中、大きな津波に襲われた自治体のひとつに岩手県大槌町(おおつちちょう)がありました。役場庁舎を流出し、町長ほか多数の犠牲者を出したこの町のようすは、2日後、窮状を訴えるために軽トラックで盛岡にある岩手県庁までやってきた町職員の肉声によって詳らかにされました。

 岩手と宮城を結ぶ三陸沿岸は明治、昭和、そして今回の平成と三度大きな津波被害を受けました。明治三陸大津波では、被災地からの使者が徒歩で津波の事実を伝達したとの記録がありますが、平成の世にあって同様の事態が起きてしまったことは、趣味とはいえ無線通信に関わる者の一人として大きなショックでした。

設置を終えたアンテナと盛岡クラブメンバー

 後日知ったところでは、12日未明に火災で道路が寸断された同町の赤浜地区から、飲料水が欲しいと救助を求める通報が7MHz帯で発せられ、大阪府池田市のアマチュアを通じて警察・消防へ伝達されていました。

 内陸部に住む私たちが沿岸被災地にできることはないかと考えたとき、再び8J7Aのコールを得てスクールコンタクトを実現させ、子供たちを励ますことが思い浮かびました。そして、沿岸部から通信の空白域をなくしたいという願いを込めて、一時、陸の孤島と化した大槌町でスクールコンタクトをおこなう計画を進めました。

 大槌町内には5つの小学校があり、児童数は全学年総勢で570名を数えます。今回8J7Aを設置した吉里吉里(きりきり)小学校を除く4つの小学校は、被災したため、現在1つの合同仮設校舎に身を寄せています。

緊張の交信のひとこま

 最初の取り組みとして、9月22日に古川聡宇宙飛行士に投げかける質問を考える特別授業を企画しました。3日前に完成したばかりの合同仮設校舎でおこない特別授業には高学年80人が参加しました。冒頭、主催者を代表しての挨拶で、発災直後にアマチュア無線が救助に役立った話を紹介したところ、子供たちや先生の多くも知っていたようで、大きくうなずいていました。
 続いて、子供たちが夢を育める社会づくりを目指すNPO法人ハロードリーム実行委員会(東京)理事の本間正人さんが講師となり、あわせて35の質問を紡ぎ出していただきました。この中で「宇宙で生活するには何が必要ですか?」という質問を作ってくれた児童に対し、「あなたは何が必要だと思いますか?」と本間先生が問い返したところ「家」という答えが返ってきました。
 多くの大人は空気や水、食糧が思い浮かぶのでしょうが、こうしたやりとりの中にも震災の爪痕を実感しました。計算上、最大10分間という限られた交信時間を考慮して、授業終了後、大人が質問を17問に絞り込みました。

会場に集まった児童や父兄ら130名が交信を見守った

 そして迎えた交信日10月15日、会場は町内の小学校で唯一被災を免れた吉里吉里小学校です。盛岡クラブのメンバーのほか、近隣の遠野クラブや三陸復興ネットワークのメンバーが遠くは東京、札幌から駆けつけ、スタッフ総勢20名が昼過ぎから設置作業に取り掛かりました。屋上の機材は3週間前に一度組み立て、動作確認を済ませておいたのですが、再設置にあたり、いくつかの不具合が見つかり、最終動作確認を終えたのは交信直前のことでした。
 こうした4階屋上での作業のようすは、1200MHzのATVを使って体育館の50型モニターに送信。日が暮れたあとは投光器でISSを追尾するアンテナを照らし出して、プロジェクターに映し出したISSの軌道状況とともにその動きを投影させました。

多くの取材陣に囲まれた大槌町の子供たち

 そのころ交信会場となる体育館では、国立天文台水沢教授で惑星探査衛星「はやぶさ」のサイエンスチームの一員である佐々木晶先生を招いての2つ目の特別授業がおこなわれていました。タイトルは「『かぐや』と『はやぶさ』」。国際宇宙ステーション(ISS)との交信を前に宇宙に想いを馳せてもらおうという企画です。佐々木先生は「月の軌道は円を描いていないため、地球から見た月の大きさは一割前後変化する」といった興味深い話などを分かりやすく説明し、児童や父兄ら130人が目を輝かせて講演に聞き入りました。

 その後、休憩を挟んで、いよいよ交信スタンバイ。全員が固唾をのむ中、ついに18時48分、ISSの古川さんの声が会場の体育館に響き渡り、歓声と大きな拍手が沸き起こりました。少ない平地を取り囲むような大槌町の山並みが交信可能時間にどう影響するか心配しましたが、5つの小学校の代表15人がマイクを握り、結局8分間に16の質問の答えを得ることができました。

無事交信を終えて一休み

 「宇宙ステーションから地震予知はできますか?」との問いかけに対し、古川さんは「残念ながら現在の技術では予知はほとんどできません。しかし、科学者たちが協力すれば可能性があります。皆さんで頑張って研究してみてください」「夢が叶うまでには時間がかかりますが、みんなも頑張ってください」とエールを送ってくれました。

 こうしたようすはインターネット上のUSTREAMで生中継しました。また、翌日の新聞やテレビに加え、後日、質問のすべてのやりとりがノーカットでラジオ番組として放送され、多くの県民にスクールコンタクトの模様を聴いていただくことができました。

 被災地でのスクールコンタクトの成功は、本当に多くの方からの有形無形のお力添えをいただいた賜物です。あらためて関係者の皆さんに感謝申し上げます。そして、引き続き、全国の皆さんで被災地の復興を見守っていただきたいと思います。ありがとうございます。

臨時局8J7AのQSLカード(表) 臨時局8J7AのQSLカード(裏)

アマチュア無線盛岡クラブ会長
JE7RJZ野田尚紀

(10月17日掲載)
(11月02日更新、レポートを掲載)


   
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