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 強風によりアンテナが折れる

 日本のアマチュア無線家の皆様こんにちは。昭和基地では4月11日(金)の朝から、平均20m/sを超えるブリザード並みの強風(最大瞬間風速37.8m/s)が丸一日吹き荒れ、視程も数百メートルまで下がったため、外出注意令が発令されました。この風は建物を揺らすだけでなく、43次隊が建設した14/21/28MHz用トライバンダーのエレメントをも折ってしまうほどでした(写真参照)。幸い、折れたエレメントは輻射用のものではなく、28MHz用の反射器のみであったため、大きな影響はなさそうです。近日中に同等のアルミパイプをさがして補修する予定です。

 さて、昭和基地もそろそろ冬の季節となり、最低気温が-20℃以下になる日も多くなり、また明るい時間も少なく(4月11日現在の日の出07:40LT、日の入り17:04LT)なってきましたので、屋外での作業も少なくなり勤務時間外にアマチュア無線を楽しむ時間も増えてきました(6月から約1カ月半は極夜となります)。
 しかしながら、昭和基地におけるアマチュア無線用周波数の受信環境はそんなにいいものではありません。もしかしたら、「南極はノイズ源もなくて受信はクリヤーなんだろうな」と想像している方もいらっしゃると思いますが、オーロラや大気の観測をおこなうため基地の中からHFやVHFの強力なパルス電波を発射していますので、日本よりも雑音が多いというのが実情です。
 
▲ブリザードの強風で弧を描くWARCバンド用アンテナ。

▼エレメントの折れたトライバンダー。すべてのエレメントは風による「くせ」がついてしまっている。
 特に、アマチュアバンドの10,14,18MHz帯は観測用無線局から発射される電波の影響が大きく、14,000km離れた日本からの微弱な信号はパルスノイズの下に埋もれてしまいます。このため、どうしても了解度でまさる電信にかたよる傾向がありますが、コンディションさえ良ければ電話にも積極的にオンエアしていきますので、よろしくお願いいたします。
 また、50MHzにおける電波の発射も検討しましたが、HF以上に強力なパルスノイズが常時入感しており、50MHzにおける8J1RLの運用は難しいのが実情です。
【4月11日昭和基地発】

(第44次南極地域観測隊 芝崎)

Tnx 国立極地研究所