JARL CONTEST REVIEW
6m_and_down

6m AND DOWNコンテスト 入賞者レポート

今回,シングルオペ50MHzバンド部門で入賞した4名,マルチオペオールバンド部 門で入賞した1グループより寄稿をいただきました。50MHzバンドはEスポが出れば全国と交信のチャンスがありますが,それぞれのエリアによって地域性が出てくるバンドでもあります。マルチオペオールバンド部門でレポートをお願いした東京大学アマチュア無線ク ラブは,優勝を目指して富士山頂上に移動し,全国TOPの成績を収めるという快 挙を成し遂げました。誰にでも上位入賞,優勝のチャンスはあります。入賞者のコメントを読んで,次回のブラッシュアップにつなげてみてください。
  • 電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 関東1位 JH7PKU/1 金生 剛
  • 電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 東海1位 JF1MIA/2 菅原隆
  • 電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 関西1位 JK3HLP/3 上田 崇史
  • 電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 東北1位 JN7TUO 尼本孝晃
  • 電信電話部門マルチオペマルチバンド 東海1位(全国TOP)JA1YWX/2 東京大学アマチュア無線クラブ

コンテストを楽しむこと

電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 関東1位

JH7PKU/1 金生 剛
得点   マルチ      
895 × 53 = 47.435  

jh7pku

プロフィール

1976年開局以来,たくさんの局と短時間に交信できるのが好きで,国内・DXともコン テストを中心に無線を楽しんでいます。 主な活動歴は,'81〜JA1YWX/JA1ZLO/JG1ZUYでのマルチOP,'90〜  KH0AM/V85HG/FG5BG/3DA5A/V8JAのコンテストPEDI,'92〜郷里の別宅シャックか らのDX/JAコンテストへの参加,'94〜'96にはアメリカPhiladelphiaに滞在,USA コンテスター達と交流,WRTC'96へ参加など。

使用機材

  • リグ: TS570S
  • ANT: CL6DXX(7L) + CL6A(5L)
  • ロギング: zLog for Win。

なぜこの部門を選んだのか

田舎に住んでいるとV/UHFではまとまった局数ができませんので,このコンテストにはいつ も1エリアから参加。
オールバンドの設備を持って行くのは大変だし2400MHz以上の設備がないため, シングルバンドで出ることにしています。
2001年は430MHzでしたので,2002年は50MHzにしてみました。

獲得目標

1999年にも同一部門に出ていますので,自己記録802Q×56M = 44,912点の更新を 目標としました。

準備

指向性ANTが一系統しかないとANTのNULLに位置する相手が聞こえないのではないかと不安に かられる性分なため,ANTは2系統を別々に上げて同位相給電,それぞれへの単独給電を切り 替えることにしました。
Qマッチ用同軸(50オーム×2と75オーム×2)を引っ張り出して来て 動作確認。あとは,CONDX次第です。開け過ぎれば端のエリアの局には勝てませ んし,全く開けなければ,GWでマルチが稼げる関西方面には勝てません。そこそ こに開けてくれるよう運を天にお任せ!

スタートから終了まで

開始直後はひたすらSSBでランニング。その後はCW/SSBを行ったり来たりでした。
ランニングでは,一方のANTで遠くを狙いつつ,同時に他方は大票田の東京・神奈 川に向けていました。 マルチを呼ぶ場合や弱い局に呼ばれた場合は一本に切り替えていました。
遠くのエリアから呼ばれたら,バンド内を一巡りS&P。
6mのCONDXについてはほとんど素人ですが,今回は短時間のオープンもうまく捕らえられたと思います。
CONDXの変化を追いかけることで,中だるみもなく18時間テンションを維持できました。

反省点

幸運なことに,今回バンドは「そこそこ」に開けてくれました。895Q×53M。 「開けすぎ」の1999年より3マルチ減ですが,局数が93QSO増で,47,435点。自己 記録更新,大満足です。
今後また6Dで50MHzMIXをやる機会があれば,端のエリアから参加してみたいものです。今 度は「思いっきり」開けてくれるように期待して。:)
しかし,昨今の参加局数減少から,この部門の1985年JF3GPS/4の1120Q×59Mのレコード (だと思います)が敗られることはないだろうと思います。

アドバイス

よく言われることですが,目標を持って参加すること,また,現在の設備や環境が入賞す るには難しい状況だとしても「いつかは,きっと」という姿勢で興味を維持することも大 事なのではないかと思います。そして,何より "コンテストを楽しむこと!"
Thanks for QSOs. See you in the next contest.
73, TAD JH7PKU

「とにかく入賞」を目指した

電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 東海1位

JF1MIA/2 菅原隆
得点   マルチ      
485 × 36 = 17,460  

jf1mia

プロフィール

1973年開局。50MHzAMから始めました。始めのうちはコンテストにはほとんど参 加しなかったし,アマチュア無線活動も長い間停滞状況が続きました。就職して 会社のクラブ局JH1YHSに入ってからだんだんコンテストにも参加するようになっ てきました。10年ほど前からFDコンテストでJK1YMM/2に参加するようになり, 本格的にコンテストに参加するようになってきました。

使用設備

  • リグ:IC−746
  • アンテナ:6エレ八木(CD CL6DX)6mH
  • 周辺機器:ボイスメモリー,エレキー
  • ソフト:zLog
  • 発電機:スズキSX650R II

なぜこの部門を選んだのか

FDはJK1YMM/2で7MHz担当,All JAは個人局で3.5MHzに参加することが多くロー バンド屋のようになってしまいました。ローバンドが得意な訳ではありませんが 成行きでそうなりました。上のバンドでコンテストはほとんどやったことがあり ませんが,このコンテストで一番低い周波数の50MHzで参加することにしました (一応ローバンドのつもり)。
オールバンドも魅力がありますが,機材の運搬や設営 が大変でコンテスト前に疲れ切ってしまいそうなのでシングルバンドとしました。 自分の実力・体力に合った部門と考えました。

獲得目標

6m&Downでは1度も入賞したことがないので,目標は「何位でもいいからとにか く入賞すること」でした。

改善・強化ポイント

2001年の6m&Downは今回と同じ50MHzで海老名市から参加しましたが,低地なの で局数がなかなか伸びず11位ぐらいだったと思います。それで今回は1000m程度 標高があるところに移動することにしました。それと,消極的な理由ですが激戦 区の1エリアから逃げて2エリアにしました。移動地はJK1YMM/2でよく行ってい る静岡県賀茂郡賀茂村にしました。

準備

準備らしいことはあまりしてませんが,忘れ物が無いように荷物の確認程度です。 固定からの参加と違い,山の中に入ってから忘れ物に気付いても「後の祭り」と なってしまいます。

コンテスト当日

リグ,アンテナ,発電機など機材一式を車(サニー)に詰め込んで土曜日早朝出発 しました。箱根,伊豆スカイラインを通って賀茂郡に向うと,伊豆スカイライン ではコンテストの準備をしているグループを発見。ご挨拶・エールの交換をして 目的地の賀茂郡に向かい,到着は昼頃でした。それからアンテナの設営,車の中 のセッティングを行ってコンテスト開始に備えました。CL6DXは一度も組み立て たことが無く,今回始めて使ったのですが,運良く一発でOKでした。

スタートから終了まで

21時のスタート直後は天気もまぁまぁだったのですが,0時頃からは暴風雨になっ てしまいました。シャックのサニーもグラグラ揺れる状態で,発電機の給油に外 に出るのもためらいました。
これが昼ぐらいまで続き,撤収は暴風雨の中でずぶ濡れになるのを覚悟していた のですが,終了の15時頃には小降りになってずぶ濡れは免れることが出来ました。
4エリアと6エリアのマルチがすごく少なかったです。5エリアは全部できたのに 不思議でした。4エリアでできたのは広島だけ,6エリアは宮崎,鹿児島,沖縄だ けでした。

反省点

「とにかく入賞」が目標でしたから一応達成したことになりますが,2エリアの 入賞局の中ではマルチが一番少なく「質より量」になってしまった。50MHzでの 参加経験が少なくコンディションの把握がまるでなってなかったようです。もう 少し経験を積んで,開ける時間帯を覚えてマルチを取りこぼさないようにしたい と思います。

アドバイス

アドバイスする程立派な成果を出している訳ではありませんが,最近少しは入賞 できるようになってきたのはFDコンテストでJK1YMM/2に参加させてもらってい ることが大きいと思います。移動運用のコツやオペレーションなど学ぶことが多 くあったと思います。
たまには,クラブなどグループでいっしょにコンテストをやるのも良いのではな いでしょうか。

オペレートに専念できる環境を作ることが重要

電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 関西1位

JK3HLP/3 上田 崇史
得点   マルチ      
612 × 55 = 33,660  

jk3hlp

プロフィール


1983年開局。コンテストには,社団局からが主であったが素晴らしい先輩方に影 響(洗脳?)され, 個人局でも出るようになった。一時期無線から遠ざかったが1995年のXPOコンテ ストより復活。
以降コンテストでは6mMIX中心で参加。96年のHAMFAIRでついつい買ったきゅー あーるえるクラブ発行のコンテストガイドブックに刺激を受け,それ以降はマル チバンド参加もするようになり,最近はALL JA,全市全郡コンテストはマルチバ ンド参加している。

使用機材

  • RIG:FT-1000MP+トランスバータ
  • ANT:4ele HB9CV×2 8mH 北東向け
    2ele HB9CV 10mH 北向け(16年もの)
    5ele 6mH 西向け(自作)
  • SOFT:zLog
  • 電源:YAMAHA ET-800

なぜこの部門を選んだのか

元々6mというバンドが好きで,またこのコンテストは4大コンテストの中でもっと も6mでの局数が期待できるため。

獲得目標

このコンテストは,コンディションによって結果が大きく左右されるのですが,一 応前年の自分の局数を超えて,あわよくば全国1位を取ることを目標としました。

改善・強化ポイント

西向けのアンテナを,4ele HB9CVから自作5eleに変更。 その他は,効果のあった前年のフィールドデーコンテストと同じ構成としました。

準備

仕事が忙しく,直前まで参加できるかどうかすら分からず,何とか土日だけでも 空けられるようスケジュールを調整に走った。
前日の帰宅が遅くなる可能性が高かったので,前の週末のうちに車に機材を積み 込んでおいた。

コンテスト当日

台風が,日本海を通過してきて天候があれそうだったので,早めに家を出た。 現地に着くと,既に雨が降っていたが,天候が悪化するだけと考え,雨の中設営。 結果的には天候は回復するも,風が強くなってきたので正解だったと思う。
コンディション把握に昼過ぎからワッチすると,14時過ぎにはESが7エリアの南ま で下りて来ていた。本番も期待できそうだ。

スタートから終了まで

21時。スタートで,いつも通りSSBでRUNするも,開始30分でレートが落ちる。 天候のためか参加局が少ないようだ。
レートが上がらないまま,22時半にCWにQSY。こちらは結構にぎわっているように 思えるが,まずはコンテストの醍醐味のRUNで稼ぐ。
レートが落ちてきたところでいつもよりは早めに呼びに回って,気が付けば最初 の3時間は昨年と同レートに近いところまで追いついていた。
しかし,ここからの落ち込みがきつく眠気が襲ってくる。日頃の疲れから,2時台 には半分意識を失う。
そんな中,宮城(06)とQSO。蔵王だろうか,なんとPとは驚いた。
ちょっと早いが,効率が悪いので3時には寝て5時に起きることにした。
4時半過ぎに,豪雨で目が覚めてしまった。発電器を回さないと,と思いつつあま りの雨に何もする気がしない。
ようやく5時に発電器をスタートさせ復帰するが,発電器の回転が重く電圧降下が きつい。雨ざらしがいけないと思うが後の祭り。 パワーを絞ってだましだまし出る。
5時過ぎ,いつも早いタイミングでQSOできる8の局とQSO。大オープンの予感がした。 その後,8時まではオープンもなくGW勝負になる。
天候が悪いので,局数は伸びそうにない。ようやく鹿児島(46)GETで40マルチ。 8時過ぎからESがオープン。まだ中途半端なオープンで,2マルチGETだけですぐ聞 こえなくなる。
雨が弱まり,発電器の方も調子を取り戻すが,強烈なノイズを発生し,弱い局の受 信に苦労する。
9時頃から大オープンとなり,この時間帯だけは発電器ノイズも関係なく一気にマ ルチをのばす。なんと,新潟(08)までオープンしてバンドがにぎわっている。 沖縄(47)もSSBで聞こえるが,1エリアのパイルに歯が立たず,あきらめてCWでCQを 出していると,なんと別の局からCALLされた。TNX!。
その後もずっと8のESが浮き沈みしながら聞こえ続けていたが,ニューマルチもほ とんどなく,伸びないまま終わってしまった。

反省点

局数で,前年の100局以上減でした。
具体的には西方面の局が少なく,前年に比べ2〜6,9エリアを10〜20局づつ落として しまいました。
逆に,1,7,0エリアは微増だったので,それだけ近くの局が少なかったのでしょう。
マルチでも,島根を落としたのはこれまでで初めてでした。
得点も順位も下がりましたが,目立ったトラブルは発電器関係だけでしたので,今 回は割と順調に結果を出せたほうと思います。
但し,今回もコンテスト前に寝ることができず,睡眠不足の中でオペレートし,途 中で多めに寝る事になってしまいました。
疲れているに関わらず,コンテスト前はどうも気になって寝られないのです。 薬,アルコール以外で,うまく寝られる方法があれば教えてください。

アドバイス

6mの場合は,移動運用が中心になりますので,毎回設営しなければならず固定運用 に比べて余計なトラブルがつきものです。
そのため,確実に設営できる設備とし,無用なトラブルを避けオペレートに専念で きる環境を作ることが重要だと思います。
その上で,最後まで気力を振り絞って粘ることと,毎回何らかの工夫をして,前回 よりレベルアップをはかりながら,目標を持って参加し続ければ入賞も見えてくるの ではないでしょうか。  

コンディションが悪く午前中で撤収

電信電話部門シングルオペ50MHzバンド 東北1位

JN7TUO 尼本孝晃

得点   マルチ      
310  × 27 = 8,370  

プロフィール

1972年山口県防府市でJA4VYDを開局,高校1年生でした。開局当初から国内外の コンテストに冷やかし程度で交信していましたが,書類を提出することはあまり ありませんでした。コンテストに本気で参加するようになったのは7エリアに引 越ししてきた1993年あたりからで,現在のQTH福島でJN7TUOとして再開局してか らのことです。
jn7tuo

使用装備

  • RIG:FT-655
  • ANT:クリエート6エレ,ポール:フジインの7m
  • 車:日産テラノ,
  • その他:ヘイルヘッドセット,zLog,外部エレキー,眠気防止ドリンク2 本。

これらが最近の定番装備です。以前はCQマシンやPCからのキーイングを多用して いましたが, 最近は地声,手打ちでがんばっています。理由は簡単,「いねむり防止!!」です,
歳にはかないません。zLogは使い慣れたDOS版を使用しています。もはやzLogな しではコンテストはできない体になっています。

なぜこの部門を選んだのか

6mが大好きなので6m AND Downではいつも6mシングルを選択しています。でもい つかはマルチバンドにも挑戦したいと思っています。

獲得目標

今回もそうですが,いつも前回の自己記録の更新を目標にしています。もちろん いつも入賞を目標としてがんばっているのは言うまでもありません。

改善・強化ポイント

昔から言われることですが,コンテストは無線設備とそれをオペレートする運用 者の総体の実力が計られる測定現場のようなものです,毎回なにかしらの反省点 があります。そしてその反省が次回の改善点となります。
私の場合は6mに限って言えばRIG,アンテナなどの装備はここ数年変化がありま せん。いつも変わるのは車内のレイアウトでしょうか。限られた車内でいかに疲 れずに長時間のオペレートができるかに工夫をこらす訳ですが,ここ数回は後部 座席を畳み,ラゲッジスペースにオペレートデスクに座椅子スタイルで落ち着い ています。

準備

コンテスト当日は昼間のうちに買い出し等を済ませ,なるべく明るいうちにアン テナ設営等を終わらせてしまうようにこころがけていますが,もちろん仕事の都 合でそうは行かないこともありますが,今回は理想的なパターンで準備すること ができました。

コンテスト当日

コンテストはスタートから数時間でかなりの部分が決まってくると思っています。 したがって夜9時から12時くらいまでは全力で突っ走ります。私の場合はこの時 間帯は9割方CQを出す方にまわっています。CWの割合ですが,私は6mでは4割くら いでしょうか,電話のCQに5分応答がなければバンドをひとなめ呼びにまわり, その後CWに降りて同様のパターンでまた電話に上がる感じです。
6m AND Downの時期は夜中スキャッターが聞こえていることも多いので注意して います。とくに明け方の長距離,7エリアから見ると3エリア以西の取りこぼしの ないようにいつも神経を使います。装備品の眠気ざましドリンクがここで威力を 発揮します。でもその反動でこのごろは日が出るとつい寝てしまうことが多いで すが。
今回の6m AND Downでもっとも反省すべき点は,あまりのコンディションの悪さ にがまんしきれず,午前中で終了してしまったことです。今回はクラブの仲間と それぞれのバンドを運用するスタイルで移動したのですが,どのバンドもコンディ ションに恵まれず10時にはもう根をあげてしまい,12時には撤収してしまいまし た。

反省点

スコアを見ていただければわかりますが,特にマルチに関しては各エリアの入賞 局のなかで最低ですHi。いやはやお恥ずかしい。

アドバイス

毎回毎回反省すべき点は多々ありますが,それを少しずつ改善しながらスコアを 伸ばしてゆくのもコンテストの楽しみ方のひとつだとおもいます。
スタートする 前はみんな高スコアを出そうという気で始めますが,そうは問屋がおろしません。 でも終わってみるとなんでこんなに高得点が出せるのだろうかという入賞局に驚 きます。私はそういう局に少しでも追いつきたいと思っていつもコンテストに参 加しています。
これからも各コンテストで当局のコールが聞こえましたらぜひコールしてください。
See you next contest ! tu ee

日本一をめざして富士山頂へ移動

電信電話部門マルチオペマルチバンド 東海1位(全国TOP)

JA1YWX/2 東京大学アマチュア無線クラブ
バンド 得点   マルチ      
50MHz 891 × 39      
144MHz 619 × 32      
430MHz 815 × 25      
1200MHz 299 × 16      
2400MHz 106 × 42      
合計 1,394 × 59 = 420,420  

プロフィール

JA1YWXは東京大学本郷キャンパス内に開局している社団局です。最近は,駒場キャ ンパス内に設置しているJA1ZLOでの活動が多くなっていますが,今回はJA1YWXの 知名度アップを狙って(?)移動運用をすることにしました。
VHF,UHF,SHFでは, 基本的に見通し距離が交信可能範囲ですので,少しでも標高が高く全方位が見渡 せる運用場所が望まれます。日本一を目指すなら日本一の標高を誇る富士山の山 頂から参加しよう(!)ということになり,JA1YWX/2静岡県富士宮市移動での6m AND DOWNコンテスト参加が決定しました。
ja1ywx Photo by 7L4HHE

使用設備

担ぎ上げる機器は必要最小限にとどめることにして,とにかく軽いものを用意し ました。アンテナは市販品を改造するなどして,重さを抑えつつ最大限にゲイン を稼げるようにしました。パドルなど重量物は当然無しですが,小型PCばかりを 用意したのでシリアル/パラレルポートインタフェースを装備していません。と いうわけでUSBIF4CWを使用してキーイングすることにしました。ソフトはもちろ んzLog for Windowsです。

部門選定と目標

参加者を募ったところJM3CRK,7N2GHD,7N3PZJ,橋本康史,7L4HHE,谷川智洋, JG5CBRの7人が集まったので,全員が賑やかに騒いで満足できるよう,電信電話 マルチオペオールバンド部門(XMA)を選択して参加することにしました。もちろ ん全国優勝を狙います。名古屋大学JR2ZIA/0が1998年に樹立したレコード2,304 ×184=423,936を破ることを目標としました。

改善・強化ポイント

これまでの大抵の移動運用では,機材を運んだ車をそのまま簡易シャックとして 利用する,いわゆるお手軽移動運用が主体でした。今回は,標高差1000m以上を 車無しで移動しますので,自分たちの体力を考慮した計画が必要です。改善点と してはとにかく軽量化。強化する点は無し。敢えて言うなら気力の充電くらいで しょうか。重点的に設備の簡略化を図ることにしました。

準備

50MHzは4エレHB9CV,144MHzは5エレスタック八木,430MHzは8エレスタック八木, 1200MHzはGP(144/430MHzと共用),2400MHzはコーリニアです。
移動局の免許状は2400MHzまででしたので5600MHzにはQRVできません。
50MHzのアンテナは手動で回 転させることにして,144/430MHzの八木アンテナはTV/FM用の小型ローテータで 方位制御することにしました。マストパイプはアルミパイプと塩化ビニルパイプ を併用しました。小物,工具などについては,不足があった場合には対処できな い可能性が大きいので,すべての設備の接続図を書いてみて,過不足がなくなる ようにしました。これらに加えて各自の食料や飲料水が必要です。

コンテスト当日

前日夜のうちに富士宮口(2400mh)の駐車場に到着し,自分たちの身体を高地の環 境に慣らします。もし,翌日朝に風雨が強ければ駐車場近辺から運用することに しました。安全第一です。幸いなことに天候は良好でした。
早朝に機材を分担し て出発し,約5時間半かけて富士山頂の3776mh地点まで登りました。登山してい る道中は酸素の欠乏でしんどかっただけですが,山頂に着くとなんだか頭がガン ガンします。私は過去に2回ほど登頂しているのですが,これは初めての経験で す。どうも高山病のようです。症状はそれぞれでしたが7人とも発症しました。 頭痛と吐き気に悩まされながらの設営となりました。
設営開始直後の天候は快晴 で作業が順調に進みましたが,だんだんと雲が立ち込めてきて夕方には霧雨状態 になってしまいました。このような天候ではSHFでの電波伝播が心配されます。

スタートから終了まで

コンテストは18時間あります。最後まで運用を持続させるため,参加5バンドを3 時間交代でローテーションし,7人のうち2人は常に睡眠をとるようにしました。 これはアミダくじによって決定しました。実際には高山病による体調不良で充分 に寝られなかったり,トラブルが発生して対処したりと,計画どおりにはなりま せんでした。準備中から感じていたのですが,酸素濃度が低いためか身体能力が 低下していて,思うように身体が動きません。これは脳についても同様のようで, 思考まで鈍くなって不思議な感覚でした。PCロギングによる運用アシストは正解 でした。
ただし,電波の到達距離がいつもの運用より格段に大きいため大部分が ユニーク局であり,いわゆるスーパーチェックはほとんど意味を成しません。基 本データを通常の1エリアでの運用実績から作成しているためです。さらに混信/ 混変調も強烈なので,交信時にはいつも以上に集中力が必要でした。
防水が甘かったためか,明け方には144/430MHzの八木が使用不能になりました。 GP1本で3バンドを運用することになりました。これで受信状況はさらに厳しくな りましたが,他の設備にトラブルが発生しなかったのが幸いでした。マルチバン ドマルチオペなのでとにかく電波を絶やさないように心がけました。

反省点

新レコード樹立を目指しましたが,あと一歩のところで及びませんでした。JARL 発表の結果によるとJA1YWX/2 2,730×154=420,420です。あと2マルチの差で涙を 飲むことになりました。5600MHzを運用できなかったのが残念です。いまさらな がらマルチプライヤーの重要性を痛感しました。
やはり2400MHzは雲(水蒸気)に 邪魔されたようで,局数/マルチ共に少ないです。具体的にはJA1YWX/2=106×42 でJR2ZIA/0=126×45です。高地ほど都合が良いというわけでは無いようです。 50MHzも39マルチと少ないです。これはアンテナ高が極端に低かったのと,アン テナ方位変更を手回しとしたため,あまりビームを活用できなかったのが原因だ と思います。
マルチ探しステーションを設置したりPCをネットワーク化すれば, もう少し得点を上積みできたのでしょうが,今回は準備の都合で省きました。 極限状態の中,用意した設備を最大限に生かして全力で戦えたと思います。オペ レータ7人は満足感でいっぱいでした。

アドバイス

山岳移動する際には風など天候や体力を考慮して行動しましょう。平均風速 20m/sを超える風が吹いてると初心者には登山は危険だと思います。平均風速が 低くても瞬間的には強力な風が吹くこともあるので注意が必要です。今回は残雪 があり,経路の途中から他の登山道へ回り込む予定でしたが,運良く当日になっ て除雪作業がされて歩けるようになりました。事前に正しい情報を得ておく必要 があります。
登山や下山の予定には充分に余裕をもち,ライトは必携です。特に 帰りは疲労が大きいので交通安全に気を配ります。保険証などを持っておいたほ うが良いです。
100円ショップでも売っている衣類圧縮袋は偉大です。荷物がコ ンパクトにまとめられます。
とにかく全体的なコンパクト設計と余裕のあるタイ ムスケジュールなど,事前準備がとても大事です。
最近,アマチュア無線のアクティビティの低下が指摘されていますが,そんなこ とは感じませんでした。逆に,V/U/SHFって運用している人が多いんだなぁと。 タイムチャートを見てください(!)。富士山頂からQRVしているのだから当然と言 えば当然です。
要は,切り口を変えることで楽しみ方は無限にある,ということ です。日頃,国内コンテストでは呼ばれないからつまらないとお悩みの方,コン テストへの参加形態を再考してみては如何でしょうか。


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