衛星放送に与える電波障害の原因と対策(1200MHz帯)

 テレビ放送への電波障害では、件数はそれほど多くありませんが、衛星放送への電波障害に関するものも寄せられます。

■衛星放送への電波障害の原因と対策

★1200MHz帯電波によるBS受信機器のIF周波数への飛び込み

【原因】

 BS衛星は11GHz帯の電波を使って放送をおこなっています。BS衛星放送受信システムは、パラボラアンテナで受信した11GHz帯の 放送波を1GHz〜1.3MHzのIF信号に変換してBS受信チューナーに送り込むようなシステムです。
 このBS受信システムのIF周波数の一部は、アマチュア無線の1200MHz帯に含まれています。
 このことから、BS放送への1200MHz帯電波による影響について、日本アマチュア無線機器工業会 (JAIA)の電波障害対策委員会で実験がおこなわれましたが、アマチュアバンド内に含まれるIF周波数においては、 BS受信システムの近くでは1Wの出力でも障害が発生する可能性があることが確認されています。


【対策】

 BS受信機器への1200MHz帯電波による電波障害を防止するには、BS受信システムと1200MHz帯のアンテナをできるだけ離して設置することです。
 1200MHz帯アンテナとBS受信システムの水平距離もさることながら、BS受信アンテナ(特にコンバーター部)に向かって電波が発射されないように1200MHz帯のアンテナをできるだけ高く設置する方がよいでしょう。
 間違っても、衛星放送受信用パラボラアンテナの近くや、コンバーターの方向に向けてアンテナを設置してはいけません。

★HF帯などの電波による衛星放送受信用同軸ケーブルへの飛び込み

【原因】

 1200MHz帯以外の電波では、衛星放送の受信システムのパラボラアンテナとテレビ機器間の同軸ケーブルに飛び込んで障害を起こすケースも考えられます。特に大きい電力の場合に発生しやすくなります。

【対策】

 もし1200MHz帯以外の電波で衛星放送に障害が起きた場合は、VHF帯やUHF帯の地上波へのTVIと同じようにハイパスフィルターを挿入することになります。ただし、HF衛星放送のシステムはHF受信機器からパラボラアンテナに同軸ケーブルの芯線を使って電源を供給していること、放送周波数が非常に高いことなどから、特殊なハイパスフィルターが必要になります。

 参考に市販されている衛星放送用のハイパスフィルターを次に紹介します。

 このフィルターは、約770MHz以下の電波を減衰させ、それ以上の周波数を通過させるように動作します。

▲日本アンテナのUNF-177。カタログ(PDF)はこちら。


 

★衛星受信システムとは関係なくテレビやビデオに直接障害を与えている場合

【原因】

 障害の原因はもっと身近にあるかもしれません。「たまたま衛星放送を見ているときに障害が発生していることが確認されても、実は地上波のTVIと全く同様な原因で障害が発生している」という可能性も十分に考えられます。
 特にBSチューナー内蔵ビデオを地上波の1chや2chでテレビに接続している場合などには、いわゆる"一般のTVI"も発生します。
 またBS内蔵テレビであってもオーディオ回路に飛び込むアンプIや、電源ラインから飛び込む電波障害が起こる可能性もあります。
 衛星放送に障害が入るからといっても、衛星放送受信システムのみが原因とは断言できません。

【対策】

 衛星放送への電波障害が起こり、衛星受信システムに対策を施しても障害が消えないときは、機器のACコードにフェライトコアを巻くなどの、一般のTVIやアンプIと同様な対策を施してみてください。

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 電波障害対策の第一歩は、もちろん原因を特定することですが、さまざまな要因があってなかなか特定できない場合、実際に起こっている現象から一つ一つ地道に対策を施していくことが大切です。