IARU R1 YOTAサマー・キャンプ2025 レポート
 世界アマチュア無線連合(IARU)第1地域(ヨーロッパ・アフリカ)の取り組みであるYoungsters on the Air(YOTA)プログラムは、若者をアマチュア無線に引き寄せ、また若いアマチュア無線家をサポートすることを目的としています。
 YOTAの活動のひとつであるYOTAサマー・キャンプが、2025年8月18日~25日にフランス・パリ郊外のジャンブヴィルで開催され、同キャンプに、JARLから、公募で選出されたJK1FUI 後藤 佑大さんとJK1ULV 小山 有吾勝美さんを派遣しました。
 大変充実したキャンプについて、お二人のレポートをお届けします。


●1日目 8/18(月)
 数日前にあらかじめパリで合流していた私たちは、朝にパリ・サン=ラザール(Gare Saint-Lazare)駅を出発し、昼頃、サマーキャンプ開催地のフランス・ジャンブヴィル(Jambville)の最寄り駅であるMeulan–Hardricourt駅に到着しました。駅ではZS(南アフリカ)、W(アメリカ)の参加者と出会うことができ、ON(ベルギー)のスタッフの方の車に乗ってキャンプへ向かいました。
 会場はフランス・スカウト連盟が所有する研修施設で、到着するとすでに翌日のARISSスクールコンタクトのためにVUの八木アンテナや、野外運用用の大型テントやレピーター、アンテナなどが設営されており、無線運用の準備が整っていました。また、続々と到着する参加者と挨拶をかわしました。
 しばらくして参加者が揃ったころ、一週間宿泊するドミトリーに案内されました。部屋は16人部屋で、オーストリア(OE)、ハンガリー(HA)、ドイツ(DL)、ルーマニア(YO)といった各国の参加者が同室となりました。
 受付では YOTA 2025 ロゴ入りの T シャツ、水筒、RFID 付きネームタグが配布されました。
 荷物を整理したのち夕食を取り、夜にはオープニングセレモニー(Opening Ceremony)がありました。セレモニーでは主催者およびスポンサーによる挨拶、今後のスケジュール説明などが行われました。セレモニーの終盤では、会場内で使用可能なアナログ・デジタルレピーターの周波数、POCSAG/DAPNET、およびシンプレックスの周波数案内も行われました。

[コメント]
 オープニングセレモニーが始まる前、20時ごろでも空が明るかったのが印象的でした。(JK1FUI)
 祖母がフランス人ということもあり、渡仏そのものにはあまり緊張はありませんでしたが、浴室やお手洗いなどの生活環境は日本と大きく異なり、文化の違いを肌で実感しました。
 オープニングセレモニーで案内された周波数一覧が興味深く、レピーターだけでなく POCSAG/DAPNET やシンプレックスの周波数まで共有されていました。そのおかげで、改造したポケベルで全体連絡を受信することができました(オーストリアの参加者が実際に動作を見せてくれました)。(JK1ULV)

●2日目 8/19(火)
 朝食後、ワークショップに取り掛かる前に、今週一緒に過ごすメンバーが発表され、前日に割り振られたチームごとにアイスブレーキングを行いました。私たちは6つのグループに分かれ、それぞれチーム名はフランスのお菓子にちなんで名付けられました。チーム名はバゲット、クロワッサン、マカロン、クレームブリュレ、パン・オ・ショコラ、ショコラティーヌです。JAチームはクレームブリュレ(Crème brûlée)でした。このチームには、日本のほかにオーストリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、リトアニアの参加者が所属していました。
 アイスブレーキングでは、当初 YOTA スタッフが各チームに加わる予定でしたが、時間になっても現れなかったため、チームメンバー同士で自由に会話をして親睦を深めました。
 その後、この日の目玉イベントともいえるARISSスクールコンタクトが行われました。チームリーダーミーティングでFUIが交信オペレーターの一人として選ばれたので、ULVは見学に回りISSの軌跡を追ったり、動画を撮影したりしていました。
 ARISS スクールコンタクトとは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士とアマチュア無線で交信する国際教育プログラムです。参加者全員が交信できるわけではないため、選ばれた代表オペレーターが質問を行います。始まる前にフランスのAMSATの方から導線や喋る内容のレクチャーを受け、いざ本番です。交信は約 14 分間行われ、非常にスムーズで音声も明瞭に受信でき、無事全員が交信に成功しました。
 昼食後、午後のワークショップではCWのメモリーキーヤーwinkeyerを作成しました。残念ながらパーツが一部不足していたため、現地では完成に至りませんでした。後日不足パーツを受け取り、JAに戻ってから完成させました。
 夜にはインターカルチュラル・イブニング(Intercultural Evening)が開催されました。これは、各国の参加者が自国の菓子や名産品を持ち寄って紹介し合う交流イベントで、会場は大いに盛り上がりました。JAチームは抹茶チョコレートと一口サイズのようかんを用意して振る舞い、特に抹茶は多くの参加者に好評でした。
 各国の持ち寄り品には特色があり、たとえばベルギーの参加者はその場でワッフルを焼くなど、国ごとの文化の違いが感じられました。この交流イベントで、各国の若いハムたちとお菓子やQSLを交換することで、会話がはずみ様々な意見を交換し、とても楽しい時間を過ごしました。

[コメント]
 私の質問はWhat is the funniest thing to do in space?でした。私が質問をすると、ユーダイさん、「えーとですね」とまさかの日本語。回答自体は英語でしたが、驚きと同時に感動がありました。(JK1FUI)
 ARISS スクールコンタクトを見学したのは初めてで、とても興味深い経験でした。体調を崩してしまいWinkeyer作成には参加できなかったものの、夜のインターカルチュラル・イブニングには参加することができ、多くの参加者と交流できました。(JK1ULV)

●3日目 8/20(水)
 この日はワークショップやプレゼンテーションが中心の一日でした。
 午前中のアクティビティはCWパドルの制作から始まりました。3Dプリンタで印刷された部品と銅線などを組み合わせて、各自がオリジナルのパドルを製作しました。作業を行っている部屋の隅では、3D プリンタが次々と新しい部品を生成しており、その様子が印象的でした。
 午後はロケットのワークショップがありました。「アマチュア無線とロケット?」という意外な組み合わせでしたが、インストラクターによると、これはARISS(国際宇宙ステーション交信プログラム)との関連を意識した教育的活動であり、また子どもたちにアマチュア無線への関心を持ってもらうための導入教材として設計されたものとのことでした。
 参加者は紙とテープでロケットを製作し、圧縮空気で打ち上げ、三角測量を用いて到達高度を算出しました。紙と空気だけですが、約30mも飛ばすことができ驚きました。
 その後は参加者によるプレゼンテーションが二件行われました。
 1つ目の発表は、アマチュア無線が一般的ではない国で実施された DX ペディション(6O3T) に関する報告でした。残念ながらこのペディションはキャンセルされたので、運用に関しての詳しい話はありませんでしたが、現地入りするまでの経緯や準備過程について興味深い話を聞くことができました。
 2つ目は、POTA (Parks on the Air) の紹介でした。日本でも最近よく聞くCQ POTAですが、世界各国で盛んに行われているそうです。キャンプの開催地が指定公園の中でPOTAアクティベーションが行なわれたようです。キャンプの参加者とQSOして無事アクティベートできたようです。

[コメント]
 このイベントに参加する前からPOTAの活動は知っていましたが、より知見を深めることができました。JAでもアクティベーションを行っていきたいです。(JK1FUI)
 このとき製作したパドルは現在も使用しており、CW運用を始めるきっかけとなりました。POTA の紹介も大変参考になり、帰国後に自分でも POTA 運用を始めました。(JK1ULV)

●4日目 8/21(木)
 この日はワークショップやプレゼンテーション、さらにFCC試験など多くのアクティビティが行われました。
 午前中は、ベルギーの参加者によるラジオゾンデ(気象観測用送信機)に関する講演がありました。日本では勝手に上げると法律違反なので手軽に試すことはできませんが、ドイツやベルギーでは活発に行われているようで非常に興味深いお話を聞くことができました。講演では、ラジオゾンデの概要に加え、地上に落下した機体を探索・回収するラジオゾンデ・ハンティング(radiosonde hunting)について紹介されました。ラジオゾンデはセンサとマイコンが一体化した構造をしており、アマチュア無線家にとって再利用可能な実験装置として有用であるとの説明がありました。なお、日本では落下したラジオゾンデを個人が自由に扱うことはできません。
 午後は、複数のプログラムの中から参加者が希望するものを選択する形式で実施されました。
 私たちはIntro to CW(モールス通信入門)のセッションに参加しました。この講義では CW の送信運用方法というよりも、符号の聞き取り方や受信のコツに焦点が当てられており、定型文の理解を速めるための練習法などが紹介されました。CW上達への近道はとにかく聞くことだそうです。Webサイトの紹介やおすすめのパドルなど、興味深いお話をうかがうことができました。
 このセッションの後には、TETRAやDMRなどのデジタル音声通信(DV)モードに関する紹介がありました。発表では、TETRA の通信方式の概要に加え、従来から存在する D-STAR や C4FM との違いについて説明が行われました。特に TETRA と DMR の 2 方式は TDMA(時分割多元接続)を用いており、日本ではまだ一般的ではないことから非常に興味深い内容でした。TETRA は主に公共業務無線で使用されていますが、近年ではアマチュア無線分野でも利用され始めているとのことでした。
 夕食のあと、希望者を対象に1回目のFCC(アメリカ連邦通信委員会)試験が実施されました。FUIはここでTechnicianクラスに合格することができました。

[コメント]
 私はまだCWができるとは言えないレベルなので、これを期にCWを始めました。CWが得意な参加者のCW実演もあり、目標ができました。(JK1FUI)
 ラジオゾンデの紹介と TETRA のプレゼンテーションを担当されたベルギー出身の方は、説明が非常にわかりやすく、内容も興味深いものでした。特に、日本ではまだ一般的ではないデジタルモードについての話が印象的でした。DMR や TETRA は時分割多重(TDMA)方式のデジタル通信であり、日本ではまだ広く普及していないため、非常に興味をそそられました。(JK1ULV)

●5日目 8/22(金)
 午前のワークショップは無線運用で、TM5YOTAの運用を行いました。運用の際、キーボードの配列がJAでよく見るタイプとは異なり少し苦戦しました。日本製の無線機(TS-590)や電源が活躍していました。
 午後はプレゼンテーションが中心でした。
 モービルシャックの紹介では、ドイツの参加者が自身が所有する車両に無線機をセットアップした事例を紹介しました。使用されていた車両は、もともと道路整備業務用の車両で、オレンジ色の回転灯を備えたままの状態で譲り受けたものを改造したとのことでした。
 続いてARDF(Fox Hunting)に関する紹介が行われました。ARDF の仕組みや競技ルール、使用される送信機などの解説がありましたが、この日は実際のアクティビティは行われませんでした。残念ながら、フランスに持ってくるまでに様々なトラブルがあり、私たちの班に回ってきたときには送信機が1台しか動きませんでした。目の前の送信機を受信し、デモンストレーションにとどまりましたが、送信機や受信機を見たことがなかったので、勉強になりました。
 夕食後には2回目のFCC試験が行われました。FUIはここでGeneralクラスに合格することができました。

[コメント]
 キャンプ中にFCCライセンスの勉強を始め、2日かけてGeneralクラスに合格することができました。キャンプの後、JAでExtraクラスに合格することができました。(JK1FUI)
 TM5YOTA の運用では、普段と異なる環境で多国籍のメンバーと交信を楽しむことができました。基本的に英語での交信でしたが、フランスの局と交信ではフランス語も少し使いました。(JK1ULV)

●6日目 8/23(土)
 この日はキャンプ会場を離れ、パリ市内への見学ツアーが実施されました。朝早くジャンブヴィルを出発し、貸切バスで最寄り駅に向かいました。駅ではNavigo Easyという日本の交通系ICのようなものを受け取り、電車に乗ってパリ中心部へ移動しました。
 まずはセーヌ川クルーズです。船上からはエッフェル塔やルーブル美術館など、パリを代表する建築物を望むことができ、パリ市内の観光名所を一気に巡ったような気分でした。ノートルダム大聖堂が工事中だったのが悔やまれます。
 エッフェル塔のふもとで昼食を取り、午後はシテ科学産業博物館(Cité des sciences et de l'industrie)を見学しました。ここでは、自然や科学、宇宙に関しての展示物があり、その中で特にロボットや宇宙技術関連の展示が充実しており、興味深い内容でした。
 最後に、博物館の裏手にあるF4KLO(FX1A)のEME施設を見学しました。1.2 GHz 帯での EME(月面反射通信)の運用を見学しました。シャックでは日本製のトランシーバーが活躍しており、高度な実践例に触れることができました。

[コメント]
 EME設備は画像でしか見たことはありませんでしたが、いざ近くで見てみるとその迫力に驚きました。いつかQSOしてみたいです。(JK1FUI)
 午前の市内観光を通してフランスの文化や歴史を感じることができました。博物館の見学では、見覚えのあるロボットが展示されていたので説明書きをよく見たら日本で開発されたHRP-2でした。小さい頃に本で見たことがあったので少し嬉しかったです。博物館ではお土産として「Radio it your self」という本を買いました。(JK1ULV)

●7日目 8/24(日)
 アクティビティがあるのはこの日が最後でした。
 午前中にはフォトセッションがありました。仲良くなった国の参加者と写真を撮ることができ、いい思い出ができました。
 午後はfeedback and knowledge exchangeがあり、今回のYOTA Summer Campに参加してみての問題点や改善点について、各国のチームがスライド発表を行いました。JAで行ってきた事、JAに帰って活かしていきたいことなどを振り返りました。
 夕食後にクロージングセレモニー(Closing ceremony)がありました。セレモニーでは、参加証を受け取り、ついに帰国するという実感がわきました。

[コメント]
 クロージングセレモニーでは、高速CWオペレータ―賞やサテライト頑張ったで賞など、様々な表彰が行われており印象的でした。(JK1FUI)
 オーストリアチームの発表では、国内に複数のアマチュア無線団体が存在し、どの団体に所属しているかによってサポート内容が異なるという問題点が紹介されました。私たちは JARL から派遣されたためそのような問題はなく、改めてサポートへの感謝を感じました。(JK1ULV)

●まとめ
 ARISSスクールコンタクトやCWパドル制作、POTAアクティベーション、ロケット工作など、多彩なプログラムを通じて、アマチュア無線の幅広い魅力を体感することができました。特に、世界各国から集まった参加者と共に学び、運用し、語り合う中で、文化や考え方の違いを超えた共通の情熱を感じることができました。また、同年代の仲間たちが積極的に挑戦する姿に刺激を受け、自分自身も新たな目標を見つけることができました。気づけばあっという間の一週間で、改めてアマチュア無線の奥深さと国際的なつながりの強さを実感しました。また、期間中に行われたワークショップや講演はどれも内容が充実しており、技術的な知識だけでなく、参加者の興味を引き出す工夫や運営のノウハウにも多くの学びがありました。ARISS交信の準備やFCC試験への挑戦、そして実際の国際運用などを通じて、座学では得られない経験を積むことができました。これらの体験から得た知見を今後の活動や国内イベントに活かし、より多くの若い人にアマチュア無線の魅力を伝えていきたいと考えています。(FUI)
 今回の YOTA サマーキャンプを通して、アマチュア無線には自分が想像していた以上に多様な楽しみ方があることを実感しました。これまで私は主にコンテスト運用に注力してきましたが、キャンプでは DX ペディション、POTA、ARDF、EME、ARISS スクールコンタクト など、まったく異なる視点の活動に触れ、アマチュア無線の幅の広さを改めて認識することができました。
 また、各国の同世代の参加者との交流は非常に貴重な経験でした。国が異なれば文化や考え方も異なり、さまざまな学びがありました。とりわけ、同じチームで行動したオーストリアのメンバーとは強く交流を深めることができ、無線に限らず多くの話題で盛り上がりました。
 ワークショップやプレゼンテーションでは、CW の受信方法やモービルシャックの紹介といった実践的な内容に加えて、日本ではあまり普及していない DMR・TETRA・POCSAG といったデジタルモードについても知ることができ、大変興味深いものでした。
 一週間という短い期間ではありましたが、交流・技術・文化 のすべてにおいて大きな収穫がありました。今回得た知識や刺激を、日本でのアマチュア無線活動に活かし、より多くの 同世代の仲間たち に無線の魅力を共有していきたいと考えています。(ULV)

(2025.12.22)

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