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京都橘中学校・高等学校の生徒たちがARISSスクールコンタクトで国際宇宙ステーションと交信に成功
2019年8月9日、京都府京都市の京都橘中学校・高等学校の19名の生徒たちが、ARISSスクールコンタクトで国際宇宙ステーションに長期滞在中のニック・ヘイグ宇宙飛行士(KG5TMV)と交信に成功しました。
国内でのスクールコンタクト成功は97例目、京都府内での実施は4例目となります。
京都橘中学校・高等学校のスクールコンタクトのサポートに当たった、JO3DDD田中 大さんに当日の実施レポートをお送りいただきましたのでご紹介します。
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「呼び出し10秒前、お願いします」会場でISSへの呼出開始の声が響くとあたりは静寂に包まれました。いよいよ京都橘中学校・高等学校ARISSスクールコンタクトの開始です。
NA1SS, NA1SS This is 8N3KT, 8N3KT. Now It's a schedule time for school contact. Can you copy me over ? |
国際宇宙ステーションに何度か呼びかけますが、返事はなく静かな会場に声が響き渡ります。呼びかけは予定時刻1分前からおこなっていますので焦らずにコールを続けます。そして数回の呼びかけの後……。
8N3KT, This is NA1SS. I have you, loud and clear good morning.
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国際宇宙ステーションから大変力強い信号が聞こえてきました。さっそく交信スタートです。一人目の生徒が落ち着いて練習通りに質問します。
When is the most exciting time in space ?
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そしてニック・ヘイグ宇宙飛行士(KG5TMV)からの返答も強力に届いています。これまで何度か経験したARISSスクールコンタクトの中でもたいへん安定したスタートです。続いて二人目が質問します。
What does space smell like ?
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以下生徒たちは、ニック・ヘイグ宇宙飛行士に順番に次のような質問をしました。
- What impressed you most in space ?
- When did you start to think you wanted to go to space ?
- There are a lot of unmanned satellite in space, but why don't you hit them ?
- Have you ever seen the UFO ?
- Which tastes better,the food we usually eat on earth,or space food ?
- How many personal items are astronauts allowed to take into space ?
- How would you describe the space in one word ?
- Please tell me about the differences in temperature between sun lit and shaded areas outside of the space station ?
- What would you do if you encountered aliens ?
- Where would you prefer to live, in space or on the earth, if you were to live in one place for your entire life ?
- What is the best thing about being an astronaut ?
- When you see the earth from space, is there any difference between day and night ?
- Do you believe in aliens ?
- What is the thing you want to do the most after you get back to the earth ?
- What made you want to be an astronaut ?
- Can you take away your stress get your energy back after you sleep in space ?
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順調に次々交信が進み、国際宇宙ステーションからの信号も安定しています。
ただ、質問の答えがたいへんていねいで、途中から時間が気になってきました。「今回質問する生徒は19名ですが間に合うのか……」と。
時計を見ながらマイクを渡し続けます。質問を終えた生徒達は満足げに席を立ち次の生徒へと入れ替わっていきます。
会場では交信生徒の保護者や見学者が静かに交信のようすを見守り続けます。
時計では交信予定時間から10分が過ぎますが信号は安定したまま、最後の19人目の質問に続きました。
What is earth like when it is night in Japan ?
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不安の中、ニック・ヘイグ宇宙飛行士から応答が返り、全員が無事終了しました。
最後にこちらからのあいさつを送りましたが聞こえてきたのはノイズのみでした。
交信終了と同時に会場から大きな拍手が響き渡りました。ギリギリでしたが全ての質問に対して答えをもらえて大成功で終了できました。
この後、JR3QHQ田中 透関西地方本部長の「おめでとう!」という声で、生徒たちの顔に再び笑顔が戻りました。そして生徒たちは緊張感がほぐれたようで、お互いの顔を見ながら笑顔がはじけました。
生徒たちは「良かった、楽しかったという以外の感想を聞かせて?」と問われ、焦りながらもそれぞれの感想を語っていきました。一人一人の感想の表現はさまざまでしたが、国際宇宙ステーションとの交信を体験できたことの満足感、周囲のみんなへの感謝の言葉が並びます。
感想の中には「アマチュア無線ってすごい!」「将来資格を取ってみたい」というアマチュア無線家にとってすごく嬉しい言葉も聞くことができました。
今回のスクールコンタクトは一人ではなし得ない無線家同士の協力、学校側のサポート、参加家族のサポートなど多くの方の支えで成り立った温かい企画となりました。その後、急遽協力していただいた英語科の先生方から、ニック・ヘイグ宇宙飛行士の返事の和訳の紹介があり、生徒一人一人が目を輝かせて説明に聞き入りました。
最後は全員で記念撮影をおこないましたが、参加された家族の方々の写真撮影が延々と続き、みな笑顔のまましばしフリーズ状態に……。家族の方にとっても忘れがたい思い出となったことは間違いないでしょう。
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さて、今回のスクールコンタクトを振り返るとスタートしたのは2018年新年でした。学校側に働きかけスクールコンタクトの趣旨を説明。当然内容をすぐに理解してはもらえず、過去の経験で使用した資料やQSLカード、パンフレットを提示して何度も説明を続けました。
ちょうど、京都府内でのARISSスクールコンタクトが中学校としては初ということもあり、より興味を持っていただけたようです。まずはNASAへの申請書類を作成し、校長からの署名をいただき発送。その時点で中学2年生を中心に呼びかけ参加者を募ることを伝えました。
しかし1年たってもNASAからの連絡はなく、楽しみにしていた中学生も3年生となり卒業式を迎えました。そしてその春、いよいよNASAからスクールコンタクト実施の連絡が入りました。さっそく参加メンバーを募ると、入学したばかりの中学1年生が大変興味を示し18名が名乗りを上げました。
さらに、卒業して高校生となった女子が1名、ぜひ参加したいということで相談に乗ることになりました。時間的にも厳しかったのですが、なんとか第4級アマチュア無線技士の資格を得ることができ、無事参加となりました。週一回程度の学習会を重ね、途中「宇宙食」をみんなで食べて意欲を高めたり、交信のようすを動画で見たり、皆興味をどんどん高めながら本番に向けて進んでいきました。
その一方で私は申込の書類作りに追われましたが、関西アリスプロジェクトチームの手助けもあり、手際よく進めることができました。
今回1つ焦ったのは「教育委員会等からの後援」の部分で京都市、京都府どちらなのかという点、また教育委員会は公立校しか担当しないということで、書類の提出先がはっきりするまで1カ月ほどを要してしまいました。
後は免許申請も順調に進み、交信一週間前の8月1日には猛暑の中、関西アリスプロジェクトチーム&滋賀チーム合同でアンテナ設置を行いました。皆経験者ばかりで大変手際も良く、無線仲間の強い結束力を感じることができました。
現在は報告書作り、データ編集等に追われていますが、心地よい忙しさで、満足感にあふれています。国際宇宙ステーションの維持存続に限りも見えているようですが、青少年の憧れであって欲しい宇宙とのつながりを残すべく、できる限り多くの機会を全世界の子供たちに与え続けていければと願って報告を終わります。最後に最初から最後までお世話になった「関西アリスプロジェクトチーム、滋賀チーム」の皆さん本当に有り難うございました。
(レポート:JO3DDD 田中 大さん)
(8月23日)
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