高速電力線搬送通信に関する研究会について

 第10回高速電力線搬送通信に関する研究会(以下、PLC研究会という)が、10月4日開催されました。

 このPLC研究会では、前回(第9回)の研究会で杉浦座長(東北大学電気通信研究所教授)、上委員(電気通信大学電気通信学部教授)ら4人のメンバーで構成する作業班から示された報告書の素案について具体的な審議がおこなわれました。
 この報告書素案では、「PLC線路からの妨害漏洩電磁界は、主として電源線を伝わるコモンモード電流によって発生しているので、CISPR-22に規定するパソコンの通信ポートの電流許容値である20dBμA(平均値)に準拠して、この値まで制限しなければならない。
 PLC信号波は、電源線の2線を逆相(ディファレンシャルモード)で流れる電流によって伝送されるが、妨害波は、同相で流れるコモンモード電流によるものであり、電源線の平衡度(LCL)の値から推定できる」としています。

 素案作りに際して約500個の建物の電源コンセントにおいて実測をおこない、その結果から他の無線局の受信障害を極力避けるために、平衡度の良い配線を持つ家屋を測定全体の99%とし、残り1%を平衡度が悪い家屋と仮定すると、コモンモード電流値を20dBμA(平均値)以下と規定した場合には、99%の家屋の配線系を満足するISN(実際の屋内配線の線路状態や電気的特性を模擬する回路)のLCL値は測定結果から16dBとなります。この平衡度16dBを今後のPLCの基準値に設定するとしています。この値は現在試作しているPLC機器の性能では、達成が困難な厳しい値となっています。

 第10回会合では、これらの提案事項について審議がなされ、推進派委員からはLCLの値が現状に比べ非常に厳しすぎるとの意見が相次ぎました。
 これに対し、JARLは、コモンモード電流の値については、懸念がありさらに検討を要するがLCLの基準値については、推進側の主張する値(30dB)に対して大変厳しい値となっていることから賛成の意見を述べました。また、日経ラジオ社、日本放送協会、ソニー社もLCLの値についてはJARLと同じ考えを示しています。
 JARLでは、今回示された基準値に加えアマチュアバンドについては、さらに35dB 程度減衰させるためのノッチが追加されれば、これまで主張してきた静穏な田園地帯の雑音以下に抑えられるものと考えています。

 このように意見は過去9回の研究会と同様に平行線をたどり、2時間を超える議論の結果、座長から全体としての素案に対する合意は難しく、素案の基準値でパブリックコメントにかけたいとの提案が出されました。
 併せて座長からこの素案は厳しい基準値ではあるが、この基準値に向かって各社開発に努力して欲しいとの意見が述べられ、研究会は素案をパブリックコメントにかけることが決定しました。10月中には、総務省のパブリックコメントがおこなわれる見込みです。



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