無線機とパソコンを接続して運用する方式の紹介


 近年、アマチュア無線機にパソコンを接続してデジタル・データ通信が盛んに行われるようになってまいりました。
 代表的なデジタル・データ通信モード等の種類や諸元等についてご紹介します。
(電波型式等については、管轄の総合通信局等へご相談ください。)



★パソコンとソフトウエアWSJT-Xを組み合わせて運用可能な主なデジタル通信モード

 運用ソフトウエアWSJT-Xの公式サイト(https://physics.princeton.edu/pulsar/k1jt/wsjtx.html

名称 FT8/FT4
主な特徴

 FT8は後述するJT65の改良版で、新デジタルモードとして公開され、瞬く間に主要モードに躍り出しました。開発者であるSteve Franke氏(K9AN)とJoseph Taylor博士(K1JT)の名前から、FT8(Franke Taylor design 8FSK modulationの略)と名付けられています。FT8は初期のバージョン1.Xから符号構成の一部などに新たな改良加え、2019年よりFT8はより速度や機能をアップしたバージョン2.Xに進化しています。なお、バージョン1形式とバージョン2形式の通信の互換性はありません。
 一方、FT4はアマチュア無線のコンテストなど短時間でレポートを交換する用途に設計された実験的なデジタルモードです。WSJT-Xバージョン2.1Gから採用されたモードです。FT8と同様に、最小限のQSO向けに最適化された構造化メッセージ、および強力な前方誤り訂正を使用した固定長型式で送信します。送受信の切替えは7.5秒で行われるのでFT8の2倍の速度となり、RTTYと同等のスピードを実現しています。FT4は後述の、RTTYに必要な信号レベルよりも10 dB弱い信号で動作し、帯域幅も大幅に狭帯域です。

附属装置
(ソフトウエア)
諸元
【FT8】
〇方式:8FSK
〇通信速度:6.25bps
〇副搬送波周波数:
 200-2900Hz可変
〇周波数偏移幅:43.75Hz
〇符号構成:WSJT-FT8符号
〇前方誤り訂正符号:LDPC
〇電波型式 F1D
【FT4】
〇方式:4GFSK
〇通信速度:20.833bps
〇周波数帯域幅:83.4Hz
〇トーン数:4
〇符号構成:FT4型式
〇前方誤り訂正:LDPC(174,91)
 LDPC情報ビット 91ビット
 (77ビット+14ビット(CRC))
〇同期方式:コスタス法
 (4×4コスタス配列、2回)
〇電波型式 F1D

名称 JT4/JT9/JT65(JTシリーズ)
主な特徴

 JTシリーズの運用モードはアメリカのノーベル賞科学者、Joseph Taylor博士(K1JT)提唱したデジタル運用モードで、小さな電力でも遠距離通信を可能としたものです。EME(月面反射通信をはじめとした)、V/UHF帯の超遠距離通信を中心に使用されていましたが、2007年頃からはHF帯でもJT65が広く使われはじめました。

附属装置
(ソフトウエア)
諸元
【JT4】
〇方式:4-FSK
〇通信速度:47.1bps
〇周波数偏移幅:
 +17.5Hz/+35Hz
 /+70Hz/+157.5Hz
 /+315Hz/+630Hz
 /+1260Hz
〇符号構成:WSJT-X
 JT4A、JT4B、JT4C、
 JT4D、JT4E、JT4F、
 JT4G
〇副搬送波周波数:
 同期信号1270.5Hz
〇電波型式:F1D
【JT9】
〇方式:9-FSK
〇通信速度:最小6912
 〜最大252,000nsps
〇周波数偏移幅:最小0.4Hz/最大15.6Hz
〇符号構成:WSJT-X JT9-1、JT9-2、JT9-5、JT9-10、JT9-30
〇副搬送波周波数:
 同期信号1,500Hz
〇電波型式:F1D
【JT65】
〇方式:65-FSK
〇通信速度:
 2.7bps/5.4bps
 /10bps
〇周波数偏移幅:
 +174.96Hz
 /+349.92Hz
 /+699.84Hz
〇符号構成:WSJT JT65A、JT65B、JT65B
〇副搬送波周波数:
 1270.5Hz
〇電波型式:F1D

名称 FSK144/MSK144
主な特徴

 主に流星散乱通信に使用されるデジタル・通信モードで、WSJT-Xバージョン1ではFSK144が、バージョン2では改良版のMSK144がサポートされています。少々特殊な分野で使用されるデジタル通信モードのため、国内での利用者はあまり多くないようです。

附属装置
(ソフトウエア)
諸元
【FSK144】
〇方式:4-FSK
〇通信速度:147bps
〇周波数偏移幅:±661.5Hz
〇符号構成:WSJT FSK441
〇副搬送波周波数:882Hz/1,323Hz
/1,764Hz/2,205Hz
〇電波型式:F1D
(※WSJT-Xバージョン1でサポート)
【MSK144】
〇方式:OQPSK
〇通信速度:2,000bps
〇周波数偏移幅:±50Hz
〇符号構成:WSJT MSK144
〇副搬送波周波数:1,500Hz
〇電波型式:F1D
(※WSJT-Xバージョン2でサポート)

名称WSPR
主な特徴  2008年にリリースされたデジタル通信モードです。
 WSPRは(Weak Signal Power Radio)を日本語で言えば微弱電波ということで、概ね「極めて小さな電力でも通信可能」ということを意味した命名のモードです。
 その微弱電波を使って電波伝搬状況をPCから無線機を制御して自動測定し結果を報告する「WSPR.net(http://wsprnet.org/drupal/)」というサイトで報告することによりデータベース化して、全世界のアマチュア無線家がそのデータを共有しようという試みから生まれた運用方式です。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:4-FSK
〇通信速度:1.46bps
〇副搬送波周波数:1,500Hz
〇符号構成:WSJT WSPR
〇電波型式: F1D
注:パソコンとソフトウエアWSJT-Xの組みあわせでは、上記のデジタル通信モード以外にも、QRA64、ISCATなどといったデジタル通信モードでの運用も可能です。
 また、上記の通信方式のうち、うち一部の通信方式はJTDX(https://jtdx.tech/en/)での運用も可能です。

★パソコンとソフトウエアを組み合わせて運用可能なその他の主なデジタル通信モード

名称 OLIVIA
主な特徴  OLIVIAは、HF帯でフェージングやマルチパスをはじめとした伝搬コンディションが悪く、極めて低いレベルの信号でも、デコードできるアマチュア無線用デジタルモードとして、2003年にPawel Jalovha氏(SP9VRC)によりプロトコルが開発されました。周波数ズレ、混信などの条件下でも動作し、HF帯の低電力での遠距離QRP通信、ラグチュー用などに使用されました。前記の、WSJT-Xが普及する以前には運用者が多く見られました。帯域幅や使用するトーンの設定等により、特性、速度、機能が異なる40種類に渡るOLIVIA形式を使用できる特徴がありましたが、一般的に使用された組み合わせは、そのうち比較的少数でした。
 OLIVIAは誕生してからかなりの年月を経過しており、その後の大きなバージョンアップもおこなわれず、運用に対応するソフト群の設計が古くなってしまったこともあり、近年のWSJT-Xソフトウエアの普及によって、以前より使用される機会が少なくなっているようです。一部には根強いファンがいらっしゃり現在に至っているようです。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:FSK 32tone(5bit構成)
〇通信速度:24WPM
〇周波数偏移幅:1,000Hz
〇副搬送波周波数:500〜2,210Hz
〇符号構成:ASCII 7bit 128characters
〇電波型式:F1B、F2B

名称 RTTY
主な特徴  1849年にアメリカのフィラデルフィア←→ニューヨーク間の通信で実用化され、業務電報通信に活用されていましたが、1946年ごろからアマチュア無線でも運用されるようになった、たいへん歴史の古い文字通信のデジタル通信モードです。
 業務用のテレタイプ装置や変復調器が組み込まれたターミナル装置などの専用装置を必要としたため、以前は少々敷居が高い運用モードでしたが、近年ではアマチュア無線家が制作したパソコンをRTTYターミナル装置の機能を持たせるソフトウエアが多く登場しており、日常的にRTTYの信号音として特徴的な「ピロピロ」音がバンド内で聞こえています。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:AFSK/FSK
〇通信速度:45.45bps
〇副搬送波周波数:500〜2,210Hz
〇周波数偏移幅:±85Hz
〇符号構成:BAUDOT
〇電波型式:F1B、F2B

名称 PSK(BPSK31/BPSK63/BPSK125/QPSK63など)
主な特徴  考案者であるイギリスのG3PLX(Peter Martinez)氏が、1997年に80mバンド(3.5MHz帯)で地点間距離50kmの伝送実験を開始し、翌1998年にリリースされた文字通信モードです。PSKは複変調及び送受信制御をソフトウエアでおこないます。2相のBPSK(Binary Phase-Shift Keying)と4相のQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying)のタイプが実用化されていますが、よく利用されるのはBPSKです。アメリカ・ヨーロッパでは、BPSK31、BPSK63、BPSK125、およびこれらの混在モード、さらにQPSK63のデジタルモードコンテストがあります。
 なおこれらの方式の中では、QPSK63が最も早い文字通信ができます。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:ABPSK/AQPSK
〇通信速度:31.25〜62.5bps
〇副搬送波周波数:50〜2,700Hz
〇符号構成:STD-VARICODE(通常のVARICODE)
〇モード:BPSK、QPSK
〇電波型式:G1B、F2B

名称 SSTV
主な特徴  SSTVは「Slow Scan TeleVision」の略称で、1枚の静止画像を低速度で(数秒〜数分)かけて送信する画像通信の方式です。黎明期には残光型のブラウン管を使用したモノクロ静止画像の通信に端を発しますが、1980年代にスキャンコンバーターと呼ばれる専用通信装置が登場し、カラー画像の伝送が可能となりました。
 そして1990年台にはこのスキャンコンバーターがパソコンソフト化され、SSTVは無線機+パソコン+ソフトウエアの組み合わせで運用できる電波型式となっています。SSTVの信号は占有周波数帯域幅が3kHz以下であり、SSBの送信機で信号が送信できることから、HF帯で運用でき海外との交信も盛んです。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:副搬送波周波数変調(SCFM)
〇最高映像周波数:900Hz以下(50Hz=754Hz/60Hz=847Hz)
〇副搬送波周波数:1,750Hz(白=2,300Hz/黒=1,500Hz/同期=1,200Hz)
〇周波数偏移幅:±550Hz
〇電波型式:F3F

名称 デジタルSSTV
主な特徴  オーストラリアのEriks氏(VK4AES、故人)が開発したEasy-Palというソフトに組み込まれたモードの一つで、いわいる前記のSSTVの発展版の一つと考えられるでしょう。変調形式には直交周波数分割多重方式が採用され、従来のSSTVにはなかった誤り訂正も組み込まれており、より確実な画像伝送が可能です。
 またデジタル音声の添付も可能で、世界の多くのアマチュア無線家がデバッガーとして参加し、改良を加えたソフトウエアであり、世界中のアマチュア無線家によって現在、主流として運用されているようです。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:COFDM(直交周波数分割多重方式)
〇帯域周波数:300〜2,300Hzまたは300〜2,500Hz
〇副搬送波周波数:57Hz以下
〇副搬送波変調方式:4/16/64QAM
〇エラー訂正:リードソロモン
〇コーデック:LPC、SPEEX、MELP(デジタル音声)
〇画像圧縮:JPEG等
〇電波型式:F1D、F1E、G1D、G1E

名称 アマチュア・パケット通信
主な特徴  1980年代から急激に普及が始まったアマチュア無線の電波を使ったデータ通信の一つです。
 アマチュア無線機にパソコンを接続する際には、専用のインターフェースであるTNC(Terminal Note Controller)という附属装置を接続して通信ソフトで通信をおこないました。キャラクター(文字)ベースの通信に加え、通信ソフトの機能によりバイナリーデータの伝送にも対応しています。その後、パケット通信を使った転送系BBSも大流行しました。
 現在はTNC無しでも運用できるSoftware TNCも登場しており、現在もアマチュア衛星のテレメトリーデータ伝送やAPRS(アマチュア無線を用いた位置情報送信システム)などにも活用されています。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
【300/1200bps】
〇方式:AFSK方式
〇通信速度:300/1200bps
〇副搬送波周波数:1700Hz
〇最大周波数変移:±100/±500Hz
〇符号の構成:AX.25プロトコル準拠 ASCII/JIS
〇装置出力の最高周波数:3kHz以下
〇電波型式:F1D/F2D(FM)
【9600bps】
〇方式:GMSK(FSK)方式(ガウスフィルターにより帯域制限(BT=0.5)されたGMSKベースバンド信号による直接周波数変調)
〇通信速度:9600bps
〇最大周波数変移:±2400Hz以下
〇符号の構成:AX.25プロトコル準拠 ASCII/JIS
〇電波型式:F1D(FM)

名称 MFSK(MultiFSK)
主な特徴  MFSKは、HF帯でのキーボードチャットに便利な通信モードです。ロングパスおよび北極回りのDXパスで良好に活用できるようにチューンされています。フルタイムの前方誤り訂正(FEC)を備えた半二重の非ARQ連続位相MFSK同期モードです。
 操作はほどよい速度でのタイピングに対応でき、キーボードチャットが楽しめるのが特徴です。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:Multiple FSK
〇通信速度:15.625〜31.25bps
〇周波数偏移幅:最大キャリア数 16、キャリア間隔 ±15.625Hz
〇副搬送波周波数:500〜2,210Hz
〇符号構成:MFSK-VARICODE
〇電波型式:F1B、F2B

名称 FreeDV
主な特徴  FreeDVはHF帯で使用できるデジタル音声通信モードの一つです。特許フリーな音声符号化方式を採用し、世界のアマチュア無線家が協力して開発しており、その後も開発者たちによって改良が続けられています。
 FreeDVをインストールしたSSBモードの無線機をパソコンに接続すれば、SSBの半分以下の帯域幅の狭帯域(1.125kHz)で、高品位なデジタル音声通信ができます。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:FDMDV
〇副搬送波変調方式:14DQPSK
〇副搬送波数:14
〇データレート:1,450bit/s(CODEC2 1,375bit/s text 25bit/s 50bit/s フレーム同期)
〇帯域幅:1,125Hz
〇コーデック:CODEC2
〇電波型式:SSB/G1E、G7W FM/F1E。F7E
※上記の諸元はFreeDV700Dの場合です。


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