2026年10月に第1回JARL World Wide RTTYコンテストが開催されます。電話と電信のみだったJARLコンテストに、デジタルモードのRTTYが加わることになります。
これまでRTTYコンテストに参加したことがなく、今回初めて参加してみようという方にとっては、いくつかのハードルがあると思います。本稿では、それらのハードルを乗り越えてRTTYコンテストに参加できるようになるためのヒントを紹介します。
なぜRTTYなのか?現在デジタルモードで最も活発なFT8やFT4を使ったコンテストもありますが、RTTYコンテストには異なる魅力があります。
コンテストは決められた時間内にできるだけ多くの局とQSOする競技です。FT8やFT4は1QSOに要する時間がほぼ一定であり、多くの局と効率良くQSOすることが難しい場合があります。また、交信手順が高度に自動化されているため、オペレーターの技能を発揮できる場面が比較的少なく、長時間の運用では単調に感じられることがあります。
一方RTTYは、CWのようにテンポよくQSOでき、解読に必要なチューニングは手動です。電波伝搬の影響による文字化けの中から、正しくコールサインやコンテストナンバーを読み取る必要もあります。このようなアナログ的な要素が多く、オペレーターの技能が生きるところにRTTYコンテストの魅力があります。RTTYが古い方式と言われながらも、コンテストでは根強い人気を保っている理由の一つでしょう。
RTTYとはどういうものか?
図1 RTTY信号
偏位幅170HzのFSK(Frequency Shift Keying)
トランシーバーのRTTYモードでの周波数表示はMARKの周波数でなされることが多い
MARKがデジタルの1、SPACEが0になる
RTTYは図1のように2125Hzのマーク信号と1955Hzのスペース信号を用いるFSK通信です。
マークが1、スペースが0に相当します。つまりRTTYはマークとスペースによるデジタル通信なのです。
占有帯域は約250Hzです。トランシーバーで表示されるRTTYの周波数は、マーク時(2125Hzのトーンになる時)の周波数です。
RTTYの伝搬特性RTTYはCWやSSBと比較して電波が届きにくいのかそうでないのか、ということに興味があるかと思います。実際にやっているとSメーターが振れない受信信号でも綺麗に復調できる時もあります。こういう時はRTTYの優れた復調性能を実感できます。しかしSメーターが59+の受信信号でも復調できないときがあります。この原因は信号の伝搬経路が複数になるマルチパスによるものです。RTTYは信号強度だけでなく伝搬経路の変化でも復調状態が大きく変わるので、注意が必要です。
RTTYコンテストはどのようなものか?ほとんどのRTTYコンテストの特徴は、国内・海外を問わず世界中の局とQSOでき、その交信が得点やマルチになることです。RTTYの局が極めて少なかった時代に、国内局同士のQSOも有効とするルールが設けられ、その考え方はいまでも引き継がれています。RTTYコンテストの基本精神は"everybody can work everbody"(誰もがみんなと交信できる)です。
JARL World Wide RTTYコンテストも国内同士のQSOが有効で、得点やマルチになります。
周波数帯は3.5、7、14、21、28MHz帯です。JAではバンドプランの「CW」以外の「CW・狭帯域データ」や「狭帯域の全電波型式」でQRVできます。
JARL World Wide RTTYコンテストでは、交信相手とコンテストナンバーを交換します。
コンテストナンバーはRSTに続いてオペレータの年齢(年齢を送りたくない場合は”01”、”00”または”99”も可ですが"01"を推奨)を送ります。マルチオペ局の場合はコンテスト開始時におけるオペレータの平均年齢(”01”、”00”または”99”も可)を送ります。
実際に送るコンテストナンバーは、必ず最新のコンテスト規約を確認してください。
どのようにしてRTTYコンテストを始めたら良いか?まずはRTTYコンテストのQSOを受信してみることから始めましょう。
RTTYの解読機能が搭載された無線機であれば、ディスプレイで内容を文字として確認できます。
搭載されていない場合は、JE3HHT 森氏が開発したMMTTYを利用することで受信内容を表示できます。MMTTYは今では世界標準となっているRTTYソフトウェアです。現在はオープンソース化されており、最新版は英語圏向けサポートサイトであるHamsoftから入手できます。多くのコンテストソフトはMMTTYを変復調エンジンとして利用しています。
いつ、どこでRTTYコンテストが開催されているのか(https://www.contestcalendar.com/contestcal.php)
にアクセスし、画面上部中央にある[View]から「RTTY only」を選んで[Go]をクリックします。毎月開催されるRTTYコンテストの情報が一覧表示されます。
RTTY局は通常、各バンドのデジタルモード運用周波数付近に集まっています。
平常時によく利用される周波数の例を示します。
・3.5MHz帯:3.599~3.612MHz付近
・7MHz帯:7.040~7.080MHz付近
・14MHz帯:14.080~14.120MHz付近
・21MHz帯:21.080~21.120MHz付近
・28MHz帯:28.080~28.120MHz付近
コンテスト開催中は、これらの周波数を中心に多数のRTTY局が運用しています。運用にあたっては最新のJARLバンドプランを確認してください。まずは受信して、実際の交信の様子を観察してみることをお勧めします。
主要RTTYコンテストにはJA局も多数参加していますので、比較的簡単にQSOの様子を受信できるでしょう。
RTTYコンテストでの交信はトランシーバーのRTTY機能だけ、あるいはMMTTYだけでQSOすることもできますが、コンテストに参加する以上、コンテストソフトを使うことをお勧めします。
RTTYコンテストでは通常、キーボードで自由文を入力することはほとんどありません。コンテストソフトのファンクションキーに登録された定型メッセージを送信して運用します。
コンテストソフトN1MM+、CTESTWIN、zLog令和版3.0などのコンテストソフトはMMTTYをRTTYの変復調エンジンとして利用できます。
N1MM+は世界中の多くのRTTYコンテストのルールに対応しています。CTESTWINも多くのRTTYコンテストに対応しています。zLog令和版は、現在は3つのコンテスト(CQ WW RTTY、CQ WPX RTTY、JARL World Wide RTTY)にだけ対応しています。
ここで「MMTTYを変復調エンジンとして使う」と言ったのは、コンテストソフト上でのRTTYの機能(送受)のみをMMTTYを使って行うという意味です。言葉を変えて言うと、コンテストソフトでRTTYコンテストを立ち上げた時は、MMTTYの変復調の機能が同時に立ち上がり、この機能によりコンテストソフト上でRTTY運用ができるようになるということです。
MMTTYと各コンテストソフトの設定方法について記述してあるURLを本パンフレット最終ページの「参考情報」にまとめました。参考にしてください。
RTTYの送受信RTTYを送受信するには次の3つの方法があります。
1. 無線機のRTTY送受機能を使う
2. 送受ともオーディオ信号を使用
トランシーバー:USBまたはLSBにセット、さらにDATA機能がついているトランシーバーではDATA ON。
ソフトウェア:MMTTY(送信ポート:サウンド)
受信:トランシーバーの受信オーディオ信号をPCのマイク端子に入れる。
送信: PCのイヤホン端子から出される送信オーディオ信号をトランシーバーのマイク端子へ接続する。
新しいトランシーバーではUSBケーブル1本で上記の送信・受信ができます。
3. 受信はオーディオ信号を使い、送信はトランシーバーのRTTY機能(FSK)を使う。
トランシーバー:RTTYモードにする。
ソフトウェア:MMTTY(送信ポート:COM+TXD(FSK))
受信:2の方法を使う。
送信:トランシーバーのFSK端子を使う。
新しいトランシーバーではUSBケーブル1本で上記の送信・受信ができます。
お試しなら上記のどの方法でも良いですが、本格的なコンテスト運用を行うのであれば、方式3を推奨します。ここで「本格的」と言ったのは、コンテストがスムーズかつストレスなく運用できるということ。
トランシーバーのRTTYモードを使う利点は次のようなものです。
・RTTY専用の受信帯域幅が用意されているため、QRMを避けるために帯域幅を目いっぱい狭めることができる。USBあるいはLSBではRTTYの最小帯域(250Hz)まで狭められない。
・周波数表示が明確(マークの周波数)。USBやLSBではキャリヤ周波数が表示される。
パソコンとトランシーバーの接続方法パソコンとトランシーバーの接続は、古い機種と新しい機種では大きく違いがあることもあり、最初は難しさを感じるかと思います。やっていることは原理的には同じなのですが、ハードウェアでやっていたことが、ソフトウェアで仮想的にできるようになっています。昔のPCやリグのインターフェースから最新のPCとリグまで、接続方法を説明していきます。
下の図2にはCOM端子(RS-232Cポート)がある古いパソコンの例を示しました。トランシーバーにUSB端子はなく、外部機器と接続する通信端子があります。詳細な回路例は巻末の『参考情報』に掲載した資料を参照してください。
図2
古典的なインターフェース
PC内蔵サウンド機能を使用
PCにCOMポート(DSUB-9)を2個持つ
LEVEL/Iso.信号レベル調整とアイソレーショントランスの意味
TR or Phtocouplerはオープンコレクタのトランジスターあるいはフォトカップラーの意味
図3
PC内蔵サウンド機能を使用しないでUSB外付けサウンドインターフェースを使う
COMポートを持たないPCを使用
USB-COMポート変換器を使用
LEVE/Iso.信号レベル調整とアイソレーショントランスの意味
TR or Photocouplorはオープンコレクタのトランジスターあるいはフォトカプラーの意味
図3はCOMポートが廃止され、USB端子のみになった最近のパソコンを使う例です。トランシーバーにはUSB端子がない機種なので、USB-COMポートの変換器を使用しています。この例ではパソコン内蔵のサウンド機能を使わず、外付けのサウンドインターフェースを使っています。外付けのものはパソコン内蔵のものよりダイナミックレンジが広いことが多いので、復調性能の高性能化を狙ってこのようにしていたことがありました。
USB-トランシーバーインターフェースデバイスはUSBケーブル1本でサウンド機能、キーイング機能、PTT機能、リグコントロール機能を行う
市販品としてはmicroHAM社のmicro KEYER IIIやJG5CBR中茂氏のUSBIF4CW Gen.3などがある
図4は、PCとトランシーバーの間にインタフェースデバイスを入れた例です。PCとの接続がUSBケーブル1本になり、図3に比べてかなりシンプルになっています。
図5
最新の無線機はPC側に仮想COMポートドライバーを入れることにより、USBケーブル1本でRTTY(FSK)キーイング、受信、CATコントロールができる
ICOMの機種ではIC-705、IC-7300、IC-7300MK2、IC-7610、IC-7850、IC-7760が対象機種
KENWOODではTS-990、TS-890が対象機種
YAESUではFT-710シリーズ、FTDX10シリーズ、FTDX101シリーズ、FT-991Aが対象機種
TS-590S/TS-590SGはUSBとオーディオとCATのみでFSKするためにはACC端子のRTTY端子をキーイングする必要がある
FT-891はUSBオーディオ機能を持たないため、RTTYの受信信号はRTTY/DATA端子や外部SP端子などから取り出し、PCのオーディオ入力に接続する必要がある。送信はUSB経由でFSKキーイング可能
図5はPCとトランシーバーをUSBケーブル1本で直接接続した例です。最新のオールモードトランシーバーでは、USBオーディオや仮想COMポートなどに対応しており、このようなシンプルな接続が可能になっています。
RTTYコンテストでの交信方法基本的にはCWと同じですがRTTYは文字化けが多いので、冗長と思われる内容になることもあります。さまざまなスタイルがありますので、聞いてみて自分に最適なスタイルを作れば良いと思います。
例1 1番シンプルな例
コンディションが良い、あるいはQSBやマルチパスが無い時はここまでシンプルにしても問題ありません。ただし、RTTY特有のものとしてはCQ時や呼び出し時に自局のコールサインを2回送るところやレポートを2回送るところがあります。RTTYは文字化けが多いためこのようにします。受信状態が悪い場合は、自局のコールサインやコンテストナンバーを3回送る方が良い場合もあります。
CQ局:JA1RL JA1RL TEST
呼出局:JA2RL JA2RL
CQ局:JA2RL 599 60 60
呼出局:599 74 74
CQ局:TU JA1RL QRZ?
例2 一般的な例
CQ局:CQ TEST JA1RL JA1RL
呼出局:JA2RL JA2RL
CQ局:JA2RL 599 60 60
呼出局:JA1RL 599 74 74
CQ 局:TU JA1RL TEST
※注1 CQを出す時、最後にCQを付けることがあります。
CQ局:CQ TEST JA1RL JA1RL CQ
※注2 了解のRまたはRRRを入れることもあります。
呼出局:R(またはRRR) JA1RL 599 60 60
※注3 KまたはKKKを入れることもあります。
無線機の機種別に接続や設定方法を知りたいことがあると思います。生成AIに聞いてみるというのが結構有効な手段ではないかと思います。例えば「IC-7300でRTTY(FSK)をやるにはどうすれば良いですか?」と言う風に聞くといろいろ教えてくれます。
ただし、最終的にはメーカーの取扱説明書や信頼できる解説資料で確認してください。
おわりにRTTYは古くからあるデジタルモードですが、コンテストでは今なお世界中で親しまれています。
まずは受信から始め、ぜひJARL World Wide RTTYコンテストに参加してみてください。
コンテストでお会いできることを楽しみにしています。