大切な近隣への配慮
(電波障害ではない問い合わせなど)

 アマチュア局が電波障害に十分注意をしていても、また、直接アマチュア局が発射する電波による障害ではない場合でも、近隣のお宅からはいろいろな苦情が寄せられることがあります。JARL事務局に寄せられる電波障害の問い合わせの中には、直接電波障害に関係のない事例があります。
 アマチュア無線に詳しい知識がない近隣の方々は、アマチュア局に対して日頃こんな不安を感じている場合があるという事例です。

■アンテナタワーに関する苦情


●アンテナタワーが与える印象

 アマチュア無線局のシンボルとも言えるアンテナタワー。アマチュア局から見れば、その地上高が高ければ高いほど「素晴らしい」となるのですが、近隣の方々の目にはそのようには映りません。

  • 隣のアンテナタワーが倒れてきたらどうしよう。
  • タワーの上のアンテナが、風の強い日にゆらゆら揺れているけど、本当にだいじょうぶ?

 といった構造的な問題から、

  • 隣に引っ越してきてすぐ、何のあいさつもなく突然高い鉄塔が建った。
  • 美観を損ねている。

 といった感情的な問題までいろいろです。

 このようなケースで、よくJARL事務局に入る問い合わせは次のようなパターンです。

  • アンテナタワー建設についての法律上の規制を教えてください。
  • アンテナの上空侵犯についての法律的な規制はありますか。

●建造物障害の問題

 もっと深刻な場合には、アンテナタワーが建てられたことにより、

  • テレビの映りが悪くなった。
  • テレビから変な音が聞こえてくるようになった。

 という場合です。このようなケースでは、建造物による「放送受信障害」の問題まで発展することがあります。建造物による放送受信障害に対しては、受信環境クリーン協議会の指導で、建造物の建築主が保証することが一般的になっています。

 さらにタワー建設による放送受信障害は、その因果関係を立証することが非常に難しく、アマチュア局が電波障害の対策を保証することも困難です。

 これらの問題は、日頃からアマチュア無線への理解を深めてもらうために、近隣の方々とコミュニケーションをとって、問題が大きくならないようにするしかないのかもしれません。

【参考】一般の方の電波障害への理解

 電波障害を受けている人の側からみれば、その原因が自分の家のテレビや受信ブースターなどの設備の不具合によるものも、集合住宅やビルの共同アンテナの整備不良によるものも、ブースターの異常発振によるものも、近くに大きなアンテナがあれば、結果的にアマチュア無線局にまったく関係のない障害であっても原因が判明するまでは、それが原因ではないかと思いこまれてしまいがちです。

●なぜアマチュア無線局が疑われるのか

 テレビやラジオ、そのほかの電気製品などは、いったん故障すると修理しない限り正常に復旧することはあまりありません。
 しかし、テレビ用受信ブースターなど関連機器の故障による障害は、時間がたつと回復することが多いため、無線局の障害と誤解されることがあります。これらの障害は、季節、天気、電圧の変動などにかかわっているものも少なくありません。
 このほかに電気雑音による障害や放送電波の異常伝搬による障害なども、発生したり止まったりすることが多いため、アマチュア無線局による障害と誤解されやすくなります。

●何事もはじめが肝心

 第一に、ご近所といかにして友好関係を保つかを考える必要があります。
 ある日突然、数人の人達がきて大きなアンテナを建てるのでは、ご近所の方々が驚かないはずはありません。大きなアンテナが建つと必ず電波障害が発生するのではないかと心配します。また、台風等による倒壊や落雷等も気になります。

 電波障害が発生すると、その障害がアマチュア無線局によるものではなくても、100〜200メートル位の範囲にあるアマチュア無線局用のアンテナが疑われます。アマチュア無線局を開設しようとするときには、アンテナを建てる前から隣近所と話し合っておくことが理想的です。このときに、電波障害が発生したときの連絡や対策の方法についても、話し合っておくとよいでしょう。
 すでに開局している人は、アンテナの変更や増設の際に行うことも一つの方法かと思われます。

 一般的に電波障害の相談は、発生してから1〜2年以内のものがほとんどです。中には、障害が発生しはじめてから5〜10年以上がまんしている人が相当数あります。ご近所の方々は、隣近所どうしの関係を気まずくしたくないと我慢をしていることがほとんどです。

 アマチュア無線局を開設し、長年にわたって楽しく運用するには、周辺住民に対してテレビやラジオなどに障害を与えないと同時に、アマチュア無線が障害の原因者だと疑われないようにすること、そして万一障害が発生した場合、お互いに協力してその対策に取り組めるように、日頃からご近所とのおつきあいを大切にしておかなければなりません。