電話機に与える電波障害の原因と対策(テレホンI)

 最近の電話機は、通常の外線との通話の機能だけでなく、親機と子機の通話、子機どうしの通話、留守番機能など多数の機能を持たせるために、さまざまなオペアンプや半導体素子が組み込まれて電子化されています。
 このために、近接する無線局の電波が直接電話機の内部回路に飛び込んだり、電話線や屋内の配線に電波が誘起されて障害が発生します。

■テレホンIの症状と調査

 電話機への電波障害は、通話中に受話器あるいは内蔵スピーカーからアマチュア局が送信している音声や電信の断続音が混入するのが一般的です。
 また、インターホンと電話機が接続されたホームテレホンでは、玄関のドアホンの押しボタンを押さなくても親機の呼び出し音が鳴ってしまうといったケースもあります。
 電話機への電波障害は、アマチュア局が送信している音声や電信の断続音が電話の通話中に受話器あるいは電話機のスピーカーから聞こえてくるのが一般的です。テレホンIの調査は、障害を受けているお宅に電話をかけ、通話中状態で電波を発射して音声などが混入するかどうかを確認します。
 アマチュア無線の電波によって電話機に音声などが混入するテレホンIは、次のような原因で発生する場合が多いようです。

★電話回線や電源ラインから飛び込むテレホンI

  • 電話回線(局線)にアマチュア局の電波が誘起されて電話機内部の電子回路に飛び込む。
  • 100Vの家庭用電源ラインにアマチュア局の電波が誘起されて、電話機に電源を供給するACアダプターを通じて電話機内部電子回路に飛び込む。

★電話回線・電源ライン以外から飛び込むテレホンI

 電話機本体と受話器との間のカールコードにアマチュア局の電波が誘起されて電話機内部の電子回路に飛び込むこともあります。今回紹介した144MHz帯の電波によるテレホンIでも、このことも原因として推測できます。受話器を持って話をしているときのカールコードの長さは約50cmとなりますから、ちょうど144MHz帯の1/4波長のアンテナになります。カールコードを束ねて長さを変えてみて障害の程度が変化するあるいは障害の程度が軽くなる場合は、これが原因と判断できます。

■資格なしでできるテレホンIの対策

 無線局の基本波が通信線や電話機のカールコードに誘起して障害の原因となっている場合は、電話機の入口やカールコードにフィルターを挿入するのが一般的です。
 また、基本波が電話機の内部回路に直接誘起している場合は、内部回路にコンデンサーを付加する方法が一般的です。
 電話機内部に手を入れたり、電話回線(局線)にフィルターを入れたりするには、一定の資格が必要です。電話機に接続されている局線のモジュラージャックの抜き差しやAC電源アダプターの抜き差しであれば資格なしでもおこなえるので、ここでは簡単にできる対策方法を紹介します。
 なお、近隣のお宅の電話機に対策をおこなう場合は、当然のことですが事情をよく説明して、了承を得てからおこなうようにしてください。

(1)電話回線(局線)への対策
 アマチュア局が発射する電波が、屋内の電話配線に誘起されて障害を起こすことがあります。このために、局線から電話機の内部回路に誘起された電波が混入しないような対策が必要です。
 電話機の後面から局線のモジュラージャックを引き抜き、フェライトコア(アミドンFT-114#43など)やEMIクランプ(TDK ZCAT-2032など)の局線を3〜5回巻いて(バイファラ巻き)対策をおこないます。
 あるいは、市販のテレホンI対策部品(フェライトコアにキャンセル巻きしたもの)を電話機と局線との間にモジュラーコンセントで接続します。これらの対策は、できるだけ電話機に近い所でおこなうのが効果的です。

▲EMIクランプにモジュラーケーブルや電源コードを巻いて対策
(2)電源線(電源アダプター線)への対策
 最近の電話機は、ACアダプターで内部の電子回路に電源を供給するようになっています。アマチュア局が発射する電波が、家庭用電源ラインに誘起すると、ACアダプターをとおして電話機の内部回路に電波が混入して障害を起こすこともあります。このために、家庭用電源ラインに誘起した電波が電話機の内部回路に混入しないような対策が必要です。
 電話機の後面からACアダプタープラグを引き抜き、フェライトコア(アミドンFT-114#43)やEMIクランプ(TDK鎧CAT-2032など)に電源線を3〜5回巻いて対策をおこないます。
 この対策も、できるだけ電話機に近い所でおこなうのが効果的です。

▲市販のテレホンI対策部品もある
(3)受話器のマイクへの対策
 受話器内部のマイクエレメントにアマチュア局の電波が回り込むことで障害が発生することがあります。これが原因の障害は、マイクエレメントに1000pF程度のコンデンサーをハンダづけすると効果があると言われていますが、
この対策は、電話機メーカーにお願いするようにしてください。

【テレホンI対策の実例はこちら】


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