■電力線搬送通信(PLC)とは■

 インターネット接続のための有線通信回線というと,電話線やCATV,光ファイバー網などが一般的です。
 オフィスや家庭に引き込まれている「線」は,これらの通信回線だけではありません。電力を供給する商用電源の「電力線」が必ず引き込まれています。
 PLCはPower Line Communication(電力線搬送通信)の略称で,オフィスや一般家庭に引き込まれている商用電源ラインに,電力を供給するだけではなくデータの信号を乗せて電力線を通信回線として共用しようとする技術で,電力会社や通信機器メーカーなどが中心となって450kHz以下の周波数を用いるものの高度化と,短波帯を使用するもの(HF PLC)の開発を進めています。

 このHF PLCは,短波帯(1.7MHz〜30MHz)の周波数の搬送信号波を電力線に乗せ,電源と同時にデータ信号を送受信し,インターネットへの高速接続を可能にしようとするものですが,短波帯の信号を使用するこの技術は,HF帯の繊細な電波を使って交信を楽しんでいる私たちアマチュア無線家にとって,大きな障害を与える危険性を持っています。

 たとえば欧州で進められているPLCでは,各家庭の引き込み線までは主として「光回線」を用い,家庭用の引き込み線の分岐線から短波帯の信号波に変換して各家庭内に供給するシステムが考えられています。

 欧州の電力会社側は,「電力線は都市部では地下配線で,家庭内や空間に漏れ出る短波帯の信号強度は問題にならないほど低い」としているようですが,特に郊外の電力線配線は日本と同様に架空配線(電柱間を電線で結ぶ配線)となる部分が多く,架空配線はもともと短波帯の信号の伝送用線路として設計されていないため,架空配線からの搬送信号波の外部放射が問題となっています。
 欧州各国の電力線搬送通信の実状や,アマチュア無線に与える影響などのデータは,DARC(ドイツの連盟)のホームページ(http://www.darc.de/referate/ausland/plc/index.html)に詳しく紹介されています。