■南極リポート(第8回) 『沿岸旅行』
 日本のみなさん、こんにちは。

 7月半ばに昭和基地に太陽が戻ってきて以来、どんどん昼間の時間が長くなってきています。もう真っ暗な夜は期待できず、真夜中でも薄明るくなってきました。冬の期間、越冬隊員を楽しませてくれたオーロラ撮影のシーズンも終わりです。明るい時間が長くなるとともに野外での調査・観測活動が本格化してきています。
解氷上の雪上車
カブースと氷瀑  昭和基地から南に延びる宗谷海岸沿いの大陸露岩地域ではいろんな観測や調査が行われています。約70km離れた場所にある「スカーレン」では地震計やGPS観測装置等が設置されています。また、そこに至るまでの海氷上では海底地下水調査、GPSによる潮汐観測が行われています。沿岸旅行は、これらの装置のメンテナンスを主な目的として行われます。(GPS:全地球測位システム)

 移動中の雪上車と昭和基地との通信は、UHF(460MHz帯)またはVHF(150MHz帯)で行われます。宿泊地では定時交信を行い人員・車輌・食料・装備等の安全確認をします。非常時に備えて衛星携帯電話を持つ等、野外での活動には安全確保のため通信は必要不可欠なものになっています。

 さて、短波の伝搬状態ですが、10月に入り春型(日本では秋)になってきました。21MHz以下でヨーロッパの局が強力に入感するようになりました。最近は10MHz、14MHzでの運用が多いですが、7MHzでの運用も開始し、日本との交信も僅かながらできています。46次隊での運用も、残すところ3ヶ月余りとなってきました。今後ともよろしくお願いいたします。
(第46次日本南極地域観測隊 小林正幸 JR1FVH 2005/10/23

写真1(上から):海氷上の雪上車。木製の橇に必要な燃料の入ったドラム缶を積んで走ります。(画像をクリックすると大きな画像が見られます。以下おなじ)

写真2:カブースと氷瀑。観測旅行の拠点となるカブース(居住用の建物が乗った橇)です。

写真3:昭和基地との定時交信。VHF電波を使って、約70km離れた昭和基地と通信します。

写真4:海氷に沈む夕日。カブースの屋根にVHFのコリニアアンテナとUHF用八木アンテナが見えます。電波伝搬調査用に仮設したものです。

写真5:海氷上でのGPS観測。GPSを使って潮汐を正確に観測する装置です。

昭和基地との定時交信
海氷に沈む夕日
海氷上でのGPS観測
協力:国立極地研究所