■南極リポート(第5回) 『アンテナの復旧』

 日本のみなさん、こんにちは。
 5月3日から4日にかけて吹荒れたブリザードは、42.7m/sの最大瞬間風速を記録しました。風が弱くなった5月7日、このブリザードで壊れてしまったアンテナの復旧工事を行いました。この工事には高所作業車を使いますが、マイナス10℃を下回る環境では高所作業用の雪上車を動かすために、時間をかけた暖気運転が必要になります。
曲がったアンテナ
雪上車を使ったアンテナ修復作業と、こいのぼり  また、寒い中での作業は効率が上がらず、ちょっとした修理でもけっこう時間がかかってしまいます。顔にあたる風は針のように痛く、スパナ等の金属工具を持つ手も冷えて思うようには動かなくなります。今回の修理も4時間くらいかかってしまいました。

 アンテナは、今回のブリザードで激しく揺すられ、振動でボルトが緩み、反射器が脱落してアンテナ自身も大きく傾いてしまいました。さらに、給電部のボルトが抜けかかっていました。もし、これが脱落していたら、輻射器の一部が取れてしまい、とても電波を出すことはできなかったと思います。

 子供の日の特別運用の成功は、まさに危機一髪の状態だったと言えます。今回のトラブルは、組み立て時にボルトの締め方が少し甘かったことが原因のひとつですが、改めて南極の自然の猛威を実感させられました。


(第46次日本南極地域観測隊 小林正幸 JR1FVH 2005/5/8)


上から
写真1
:このアンテナで子供の日の特別運用をしました。
(画像をクリックすると大きな画像が見られます。以下おなじ)

写真2:高所作業用雪上車を使って作業中。2日遅れでこいのぼりを泳がせました。

写真3:高所作業車のバケットの中で作業。顔が痛いです。

写真4:給電部の様子。もう少しでボルトが抜けてエレメントが外れるところでした。

写真5:復旧が終わり、再び日本に向けて固定しました。
高所作業車を使ってのアンテナ修復
給電部を拡大したようす
復旧終了。日本に向いているトライバンダー
協力:国立極地研究所