東京・世田谷区「烏山宇宙プロジェクト」<br> 制度改正後初の体験制度による国際宇宙ステーションと交信に成功

東京・世田谷区「烏山宇宙プロジェクト」
制度改正後初の体験制度による国際宇宙ステーションと交信に成功


▲シハブ・アルファヒーム駐日大使閣下とクルー

  • 交信日時:2023年8月3日(木) 18:29〜18:40(JST)
  • 主催団体:烏山区民センター運営協議会
  • 地上側コールサイン:JA1ZSH(無線局免許人:世田谷区職員無線クラブ)
  • ISS側コールサイン:OR4ISS

◆企画の発端
 コロナ禍に入り恒例の地域イベントの休止が相次ぐ中、世田谷区烏山総合支所では、地域の子どもたちへの影響を懸念していました。同支所職員に複数のアマチュア無線家がおり、子どもたちに夢と希望が広がる地域イベントとして、2020年10月、ARISSスクールコンタクトへのチャレンジ準備が始まりました。JAMSATから協力いただける見込みが立ち、機材も区職員有志で用意することが確認できたことから、「烏山宇宙プロジェクト」をスタートしました。
 中高層建物が密集する地域でもありロケーションは悩ましい問題ではありましたが、区立烏山北小学校長にご相談したところ会場提供の快諾をいただけました。また、プロジェクト主催者を烏山区民センター運営協議会にお願いし、その後は、地域を巻き込む積極的な活動にご尽力いただけました(プロジェクト事務局:烏山総合支所)。


◆準備から実施に至るまで
  • 2021年4月:烏山区民センター運営協議会総会で「烏山宇宙プロジェクト」実施決定
  • 2021年7月:申請書提出
  • 2021年11月:小中学校PTA研修会「国際宇宙ステーションと私たちの暮らし」開催
 以降、主催者事業として講演会、星空演奏会などの開催のほか、地元商店街頭スピーカーからのPRを実施。区職員無線クラブによる臨時体験局公開運用も実施した。
  • 2022年4月:参加児童・生徒の募集
  • 2022年5月〜:子ども活動
 以降、2023年5月までに筑波宇宙センター見学などを含め計10回実施した。子ども活動の中で、質問作成、英語練習、PTT操作練習などをおこなった。
  • 2023年7月:交信日時確定、リハーサル実施
 参加児童・生徒は、区内在住の小学5年生〜中学3年生までの定員25名で募集し、25名(小学5年生・13名、小学6年生・5名、中学1年生・2名、中学2年生・2名、中学3年生・3名 ※いずれも当時)から応募があり、全員を「クルー」として活動を開始しました。宇宙やアマチュア無線に興味があるクルーもいましたが、保護者の勧めで参加しているクルーもおり、参加動機が一様ではなく、年齢も、学校も別々のクルーの仲間づくりには特に留意し、区立児童館の児童指導職員にレクリエーションなどで子ども活動の「雰囲気」「場」を創ってもらいました。


◆当日、UAE駐日大使閣下や留学生も来場
 交信の模様はYouTubeの烏山区民センター運営協議会 (@user-fw1de1th6j)をご覧いただければと思い、ここではその他のことを中心にレポートします。

 リハーサルを重ねてきたクルーたちなので、本番の交信も落ち着いてオペレーションが出来ていましたが、後刻、来場された大使からの温かい激励のコメントをいただき、大役を成し遂げた笑みを見せるクルーの姿がありました。
 年度を超えたことにより高校進学したクルーが2名いましたが、制度改正後の無資格の高校生として初めてのARISSスクールコンタクト交信者となりました。
 海外転出(英国在住)クルーについては、VoIPでの交信参加を検討しましたが、音声遅延などのトラブルを回避するため、あらかじめ質問音声をデータで預かり、送信用ボイスメモリーから送信し、当該クルーには交信状況をYouTubeでライブ視聴してもらいました。その他の当日欠席クルーを含め3名がこの方法としましたが、問題なく交信することができました。結果、当日在籍クルー全員18名(小学6年生・10名、中学1年生・3名、中学2年生・1名、中学3年生・2名、高校1年生・2名)が交信に成功しました。

▲スルタン宇宙飛行士と交信中のクルー

▲交信中の会場の様子

 交信相手がアラブ首長国連邦(UAE)のSultan Al Neyadi(スルタン・アル・ネヤディ)宇宙飛行士(KI5VTV)と決まり、プロフィールを確認したところUAE初の宇宙飛行士2人のうちの1人であるということなので、UAEでは英雄なのではないかと推察しました。そこで、プロジェクト事務局からUAE駐日大使館に連絡をさせていただいたところ、シハブ・アルファヒーム駐日大使閣下や大使館高官、日本の大学で学んでいる留学生が来場され、大使にあっては、東北地方での公務から予定の列車時刻を変更して会場に来られました。

 コロナ禍での実施であり、コントローラーなどスタッフについては交替要員を複数確保する必要があったため、JAMSATメンバーやローカルのアマチュア無線家にご協力いただきました。
 「宇宙」「アマチュア無線」を通じ、多くの皆さまにお力添えをいただき、携わったすべての人が感動の成功を得ることができました。この場をお借りして感謝し御礼を申し上げます。ありがとうございました。


▲クルーと無線関係スタッフの集合写真

写真提供:世田谷区
[レポート:JA1ZSH世田谷区職員無線クラブ 柳澤純(JQ1LKQ)]