埼玉県のボーイスカウト狭山第二団で<br> 国際宇宙ステーションと交信に成功

埼玉県のボーイスカウト狭山第二団で
国際宇宙ステーションと交信に成功


▲宇宙にいる大先輩に、地球から敬礼!!

 令和4年7月13日(水)20時56分、埼玉県狭山市のボーイスカウト狭山第二団が、同市柏原のスタークラブ事務局(有限会社アイ電気内)屋上に設置したクロス八木アンテナにて、「8J1SBS」のコールサインで宇宙飛行士Kjell N. Lindgrenさん(KO5MOS)との交信に成功し、自宅からオンラインで参加したスカウトたちは安堵と喜びと感動の笑顔が溢れました。
 なお、8J1SBSの臨時局は11月8日(火)まで運用します。QSLカードを用意しているので、皆さんと交信できることを楽しみにしてます。

◆無線への興味
 令和3年10月、当ボーイスカウトとスタークラブとの共同企画「電波くんを探せ!!」にて、フォックスハンティングを体験したことで無線に興味を持ち、今春にアマチュア無線4級を受講したスカウトが何名かいました。
 無線への興味を持ってから5ヵ月後の令和4年の春、スタークラブよりARISSスクールコンタクトのお話をいただき、小学4年生から中学2年生の希望者16名が勇んで挑戦することになりました。


▲無線体験「電波くんを探せ!!」

▲スタークラブ(アイ電気)吉田代表からフォックスハンティング等の説明を受けた

◆事前準備
 屋外に集まり夜空を見上げて交信ができたらロマンチックでしたが、コロナ禍のため各家庭からオンラインでの参加となり、事前にネット環境などを確認しました。
 また英語での質問ということで、同市内で活躍するALT(外国語指導助手)の先生から英語のレッスンを受けました。質問はスカウト自身が考え、候補をいくつか準備して顔合わせ、そして対面での楽しいレッスン、質問の確定。その後、4回のオンラインリハーサルを重ね本番へ。質問に対するレッスンだけではなく、スカウトたちの緊張をほぐすように色々な手段で楽しませてくれました。
 このことで宇宙だけでなく英語への関心も広がったと感じます。

▲ALTの先生の楽しい英語レッスン

▲ALTの先生たちと、英語での質問を検討した

◆宇宙飛行士と、メインオペレーター
 交信をする宇宙飛行士のKjellさんは元ボーイスカウトであり、最高のランクであるイーグルスカウトの経歴です。スカウトの大先輩と現役後輩の、宇宙と地球での交信という輝かしい記念日となりました。
 そしてメインオペレーターは狭山工業高校アマチュア無線部部長の渡邉恒星くんが務めることとなり、オペレーター含む全員が18才以下で臨む交信となりました。練習も本番も素晴らしい進行で、きっと何度も個人練習を重ねてくれたのだと思います。終了後、スカウトから「彼のような高校生になりたい」「かっこよかった!」と感想が寄せられるなど、宇宙との交信という本来の目的以外にもスカウトたちに大きな影響を与える出会いがありました。

▲オペレーターの渡邉くんもリハーサルに参加

▲取材にもしっかりと答えた

◆いざ本番
 ボーイスカウトのモットー(標語)である「そなえよつねに」の考えのもと、何度も練習し、各家庭でも練習を積みました。色々な状況への対応も思いつく限り考えました。しかし、宇宙との交信というトラブルゼロではない企画、本番当日、スタークラブ事務局であるアイ電気さんは緊張に包まれていました。

▲緊張のなかでも練習の成果が出せた
 翻訳チーム、地元のケーブルテレビや市の広報担当者などがレンズ越しに見守るなか、Kjellさんの応答が聞こえた瞬間、スカウトたちの口元が緩み目を輝かせる様子がしっかりと画面に映し出されました。記録にすべてを残せるという点はオンラインの利点でした。そして多くの方のご尽力の元、無事に16人全員がクリアな音声での交信を成功させました。
 「スカウトたちにメッセージを」というオペレーターからのお願いに、Kjellさんからは「皆と話が出来てとても楽しかったです。このような時間を作ってくれてありがとう。私も若いころボーイスカウトに入っていたし、今は息子たちがボーイスカウトにいます。キャンプしたり自然の中での時間を楽しんでください。キャンプは私も大好きな行事です。みな元気で! 今日は本当にありがとう」と返事があり、最後は「さよなら」とボーイスカウトの敬礼をして交信が終わる、夢のようなシーンでした。

◆翻訳チーム

▲交信終了後、返事の内容が伝えられた
 交信が順調に進むなか、画面の向こうには翻訳をしてくれる4人の姿がありました。宇宙映画の一幕になりそうなカッコいい翻訳姿からは、Kjellさんの返事を楽しみにしているスカウトたちへの熱心な気持ちが伝わってきました。

◆感謝を手紙に
 興奮冷めやらぬ状況とはこのこと、何日経っても(今でも)感激と感謝の気持ちは冷めません。スカウト全員から、Kjellさん、スタークラブの方々、ALTの先生、翻訳チームの皆さん、後援の広瀬公民館館長さんに手紙を書きました。

<スカウトたちの感想(一部)>
  • 無線や宇宙のことについて教えてもらい、無線をやってみたくなりました。
  • 宇宙や無線に興味を持ちました。今度、講習を受けます。宇宙の本も買います。
  • まだ一度も無線を使ったこともなく、外国の人と話すのも初めてでした。この経験を大切にしたいです。
  • 英語のレッスンでは、宇宙に関するたくさんの単語を知ることができました。
  • 心臓が飛び出るくらい緊張したけれど、はっきり言えたし、簡単な単語は聞き取れて嬉しかったです。
  • いつかオペレーターをやってみたいです。英語の勉強がんばります。
  • 夏休みの自由課題は、宇宙のことについて調べようと思います。
  • アンテナを張ってくれたり、オンライン練習を何度もありがとうございました。
  • 全員がちゃんと質問できてうれしかったです。
  • Kjellさんと繋がったとき、本当に感動しました。宇宙が身近に感じられる体験でした。
  • 終わってから「私、すごいことしたんだ!」と思いました。
  • 一生自慢できるような素敵な10分、ありがとうございます。
 など、感動と感謝の気持ちが便せんに綴られていました。

◆ボーイスカウト技能章
 ボーイスカウトの教育法の要素(8つ)の中に年齢に合わせた「個人の進歩」があり、それはやる気を呼び覚まし成長を促すだけでなく、進歩制度を通して将来の目標を定めたり、生きていく上で役立つ技能を身につけ・行動する市民となる術を学び、社会に奉仕できるようになります。そしてその挑戦を認めてもらうことに重

▲Kjellさんから届いたQSLカード
要な役割があるとともに、項目ごとの「バッジ」を獲得することが自信にも繋がります。
 QSLカードを5枚獲得すると「無線通信章」に繋がります。KjellさんからカッコいいQSLカードが届き、当日の感動が再来すると同時に、自分の名前が手書きされていることにスカウトたちは感激していました。

◆スカウトたちへ
 今回の体験がみんなの将来に大きく影響することは間違いありません。恵まれた貴重な機会に感謝し、その経験という財産を自分だけのものにせず、いつか、社会へ何かしらの形で貢献が出来るようにこれからも活動していきましょう。

◆最後に
 一生の宝となる素晴らしい体験のためにご尽力いただいた皆様へ心より感謝申し上げます。また、今回のことだけでなく、素晴らしい機会がより多くの子どもたちに提供されることを願っています。

[レポート:ボーイスカウト狭山第二団 小林希世子]